これまで何十年にもわたる研究では、「父親が子どもにどのような影響を与えるか」が数多く調べられてきました。しかし、「子どもを持つことが父親自身にどのような影響を与えるのか」という問いを扱った研究は、ほとんどありません。
多くの男性は、父親になった後に自分の中で何が起きているのかを言葉で表現することに苦労します。外から見れば、仕事も家も日々の生活も以前とほとんど変わりません。それでも、多くの父親は、自分の中の何か根本的な部分が変わったと感じています。
「父親になることは、新しいアイデンティティーを生み出すだけではありません」と、結婚・家族療法士のトミー・マテラ氏はエポックタイムズに語りました。
「時には、それまで自分の中に存在していたものの、まだ表に現れていなかった一面を呼び覚ますこともあるのです」
現在、科学者たちは、男性がまだおむつを替えたり寝かしつけの絵本を読んだりする前から、将来父親になる男性の体に測定可能な変化が起きている証拠を見つけ始めています。
身体に起こる変化
父親になるのは、出産の瞬間からだと考えられがちです。しかし、研究によれば、その始まりはもっと早い可能性があります。
2025年の研究では、初めて父親になる男性を追跡調査した結果、赤ちゃんが生まれる前からホルモンに測定可能な変化が起きていることが確認されました。この結果は、「父親は出産まで傍観者として待っている存在」という従来の考え方に疑問を投げかけています。
この研究では、父親になる男性は父親でない男性よりもオキシトシンの値が高いことが分かりました。オキシトシンは「愛情ホルモン」や「絆ホルモン」とも呼ばれ、愛着や信頼、人とのつながりに重要な役割を果たします。研究者たちは、このホルモンが乳児期に築かれる親子の強い絆を支える働きをしている可能性があると考えています。
この研究で特に興味深い発見の一つは、テストステロン(男性ホルモン)に関するものです。父親になると、多くの男性でテストステロン値が低下する傾向が見られます。この変化によって、競争へ向かっていた意識が家庭へ向けられるようになる可能性があります。また、子どもが母親のお腹の中にいる時期にテストステロン値が低かった男性ほど、子どもの誕生後に育児へ積極的に関わる父親になる傾向が見られました。
変化はホルモンだけにとどまりません。
「共感や愛情に関わる脳の領域では活動が活発になり、さらにコルチゾール(ストレスホルモン)の体内での働き方にも変化が起こります」と、心理学者のアウグスト・ブランコ氏はエポックタイムズに語りました。
「その結果、父親は赤ちゃんが何を必要としているかにより敏感になり、より素早く応えられるようになるのです」
性格に起こる変化
母親も父親も親になりますが、その変化の過程は男性と女性で異なります。
母親は妊娠や出産によって目に見える身体的変化を経験しますが、父親の場合は、より内面的な変化として現れることが多いのです。
「私にとって一番大きかった変化は、忍耐力を身につけたことです」と、カリフォルニア州で2人の息子を育てるジャスティン・アンチュネス氏はエポックタイムズに語りました。
「子どもはいつでも親の注意を引きたがります。でも、彼らは困らせようとしているのではなく、自分の世界を共有したいだけだと気づくようになりました。父親になったことで、私は立ち止まり、子どもの目線から物事を見るようになったのです」
アンチュネス氏によると、その変化は一夜にして起きたものではなく、自分よりも誰かの必要を優先しなければならない、数え切れないほどの日常の積み重ねの中で少しずつ起こったといいます。
こうした経験は、多くの父親への取材でも繰り返し語られる共通点です。人生の中心が個人的な成功や野心から、自分よりも大きな目的に尽くすことへと変わっていく感覚を、多くの父親が語っています。
「男性は一般的に、成果や生産性、自立、仕事での成功を優先するよう育てられます」と、父親の支援を専門とする心理療法士のドリエル・ジャコブ氏はエポックタイムズに語りました。
「父親になることは、そのような自己認識に大きな問いを投げかけるのです」
2024年に発表された「The Paternal Body」と題されたレビューでは、父親になることを「発達上の移行期」と位置づけています。そして、それは男性の考え方や感情、自分自身への理解にまで影響を及ぼすと結論づけています。
数十本に及ぶ研究を分析した結果、父親になることは、男性の身体の健康、感情面、人間関係、さらにはアイデンティティーまで変えていく可能性があることが示されました。
「父親という役割には、何年もの心理療法でも得られないような変化をもたらす力があります」とマテラ氏は話します。
「人生を抽象的なものから、一気に現実的なものへと変えてしまうのです」
そして、生まれたばかりの赤ちゃんは、誰からも説明を受ける時間を与えてはくれません。
「誰かがあなたを頼りにしています」とマテラ氏は言います。
「その子はあなたを見ています。そして、あなたが意識しているかどうかに関係なく、あなたから学んでいるのです」
子どもは父親自身を映し出す鏡になる
多くの男性にとって、父親になることは、「男らしさとは何か」というこれまで教えられてきた価値観を見直すきっかけになります。
多くの男の子は、「泣くな」「強くなれ」といった言葉を聞いて育ちます。そして父親自身も、感情を言葉で表す代わりに、一生懸命働くことで愛情を示してきた人が少なくありません。
ジャコブ氏によると、子どもが泣き始めると、思わずその場を離れたくなる父親もいます。一方で、自分が幼い頃に感じた親との心の距離を繰り返したくないという思いから、ベビーモニターの小さな音にも過敏に反応し、常に付き添おうとする父親もいます。
どちらの場合も、父親になることで、自分自身がどのように育てられ、どのような男性像を身につけてきたのかが、自分の子育てにどのような影響を与えているかを見つめ直すことになります。
家族関係を専門とする心理学者のシャノン・フランクリン氏はエポックタイムズに対し、子どもの世話をする過程こそが、父親として最も大きく成長する場面だと語っています。
これまで「自分はどう感じているのか」と尋ねられることの少なかった男性が、突然、子どもの感情だけでなく自分自身の感情にも向き合わなければならなくなります。そして時間をかけて、自分の感情をコントロールし、困難な状況でも落ち着いて向き合うことを学んでいきます。
フランクリン氏は、そのような経験こそが父親自身の成長を促す重要なきっかけになると考えています。
ブランコ氏によれば、父親になることで、自分と両親との関係にまつわる記憶や行動パターンが再び呼び起こされることもあります。
「そして場合によっては、自分の親をより深く理解することで、何年も心に残っていた問題と向き合う機会になることもあります」
子どもはまた、父親と母親双方の長所だけでなく短所も映し出します。父親であることは、思いがけず自分自身を映す鏡となり、成長する機会にもなるのです。
すべてを変える人生の目的
子どもを持つことで、大きな責任を背負うことになります。それは時に圧倒されるほど重く感じられます。しかし同時に、それまでなら乗り越えられないと思っていた困難にも立ち向かう理由を与えてくれます。睡眠時間や自分だけの時間も、以前とは違った柔軟なものになっていきます。
ブランコ氏は、父親になった男性には、自信の向上、人間関係の質の改善、感情面での柔軟性の向上、そして人生への満足度の上昇が見られることを実感しているといいます。毎日が、子どもと向き合い、失敗し、学び、もう一度挑戦する機会になるのです。
生まれたばかりの赤ちゃんは、父親がどんな仕事をしているかには関心がありません。仕事でどれほど成功したかや、かつて重要だと思っていた社会的地位の象徴にも興味はありません。
子どもが知っているのは、泣いたときに誰かが来てくれるか、つらい時でもそばにいてくれるか、そして明日も頼れる存在でいてくれるか、それだけです。
多くの男性にとって、このシンプルな現実こそが、人生で経験する最も大きな変化をもたらす力になります。父親であることは、自分が想像していた以上のものを求め、自分でも気づいていなかった一面を見つけさせてくれます。
そして子どもを育てる過程で、多くの父親は、自分自身もまた、理想とする大人の男性へと今なお成長し続けていることに気づくのです。
(翻訳編集 井田千景)
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