【大紀元日本11月4日】新学期が始まり、3週間が過ぎた頃、新入生のメイちゃんが放課後に必ず校長室に顔を出すようになった。自分の家族や小学校時代のこと、学校や家での出来事など何でも話してくれる。ここ1カ月、メイちゃんは校長室に一日も欠かさず立ち寄っている。
クラスメイトは好きかと尋ねると、メイちゃんはちょっとうつむいて、「好きではありません。校長室に来るのが好きです」と答えた。私は半分嬉しかったが、あとの半分は、彼女が同じ世代の子どもと接点が見いだせないことを懸念した。
風が強く吹いたある日、私は薄くなった髪の毛を守るために帽子をかぶった。すると、メイちゃんは私のコンプレックスを察したかのように、何と私にカウンセリングを始めた。
「校長先生が帽子をかぶるのは、髪の毛が少なくなっている頭を守るためですか?」と質問してきた。
私はわざと憂いを含んだ顔をして、「実はそうなんだ。頭が薄くなったからね」と答えた。メイちゃんは同情した表情で、「校長先生はコンプレックスを感じていますか?」と、今度は直球の質問。「そうだね。少し感じているね」と声を暗くした。
メイちゃんは、「校長先生の今の髪の量は、ちょうどいい感じです。誰もそれを笑う生徒はいませんよ」と、元気づけてくれた。自分の薄くなった頭が「ちょうどいい感じだ」と言われたのは、初めてだった。少なくとも、生徒たちが私を笑い物にしていないことを知った。
「でも、前にいた学校の生徒たちからは、校長先生の頭はUFOみたいと言われたし、UFO校長先生とあだ名をつけられて、やりきれない気持ちだったよ」と私。
メイちゃんは、「彼らはただ冗談を言っているだけです。校長先生は気にしないでください。私の叔母も髪の毛が少ないけど、とても良い人です」と慰めてくれた。少ない言葉の中にも、カウンセリングの要素を巧みに取り入れた話し方から、本当に優れた子だと感心した。
自分の薄くなった頭の悩みはさておき、メイちゃんは、人の良さを引き出し、さらに励ますことができるということが分かった。メイちゃんが、良いカウンセラーのような性格の持ち主であることを知って、まずは一安心だった。
※呉雁門(ウー・イェンメン)
2004年~2010年8月まで、台湾雲林県口湖中学校の校長を務めた。同校の歴代校長の中で、在任期間が最も長い。教育熱心な呉校長と子どもたちとの間で、たくさんの心温まるエピソードが生まれた。当コラムで、その一部を読者に紹介する。
ご利用上の不明点は ヘルプセンター にお問い合わせください。