トランス脂肪酸は長年、心臓の健康に最も悪い脂肪の一つとして問題視されてきました。しかし、新たな研究では、すべてのトランス脂肪酸が健康に悪いとは限らないことがわかりました。特に、牛などの反芻動物に由来する天然のトランス脂肪酸は、工業的に作られたものとは異なる可能性があります。乳製品は、長年にわたり科学者や医療専門家の関心を集めてきました。飽和脂肪酸や天然のトランス脂肪酸を含むにもかかわらず、乳製品の摂取は、心臓や脳の健康状態が良いことと関連する場合があるためです。
新たな研究では、牛乳、バター、チーズなどの乳製品に含まれるトランス脂肪酸は、心疾患や2型糖尿病のリスク上昇とは関連しないことがわかりました。
研究者らは、ヨーロッパ、カナダ、アメリカの数千人を対象とした研究データを分析し、天然のトランス脂肪酸が、体内で工業由来のトランス脂肪酸とは大きく異なる働きをする可能性を示しました。
乳製品のトランス脂肪酸は異なる
最近『Nutrition Research』誌に掲載されたこの研究では、2種類の科学的根拠が検討されました。1つ目は、参加者が天然のトランス脂肪酸を多く含む乳製品を摂取した10件の介入研究です。乳製品由来のトランス脂肪酸の摂取量は、1日あたり1.3gから13.2gの範囲でした。
研究者らは、トランス脂肪酸を多く含む乳製品を摂取した参加者と、通常の乳製品を摂取した参加者との間で、健康指標に有意な差がないことを確認しました。具体的には、乳製品由来のトランス脂肪酸の摂取量が増えても、総コレステロール、LDLコレステロール、血中中性脂肪、心臓や血管の病気のリスクを評価する指標であるアポリポタンパク質B-100は、有意に増加しませんでした。
2つ目は、数千人を20年以上にわたって追跡した12件の長期研究です。研究者らは、血液中に含まれる乳製品由来のトランス脂肪酸の濃度を分析しました。その結果、乳製品由来のトランス脂肪酸の濃度が高い人ほど、心疾患、脳卒中、心血管疾患による死亡、2型糖尿病のリスクが低いことと関連していました。
研究者らは、天然のトランス脂肪酸と工業由来のトランス脂肪酸では、体に及ぼす影響が異なる可能性があると考えています。
工業由来のトランス脂肪酸は、液体の植物油に水素を加える「部分水素添加」と呼ばれる人工的な製法によって作られます。この過程でエライジン酸が多く生成され、代謝症候群や心血管疾患との強い関連が指摘されています。アメリカ食品医薬品局(FDA)は、2020年1月に部分水素添加油の使用を禁止しましたが、製造時期の古い製品や輸入食品には、現在も含まれている可能性があります。
一方、天然のトランス脂肪酸は、牛、ヤギ、羊などの反芻動物の胃の中にいる細菌によって作られます。その過程で生じる主な脂肪酸には、ワクセン酸や共役リノール酸があります。これらの成分は、研究で肥満やがんとの関連について調べられていますが、健康への効果については、さらなる検証が必要です。
「人々は『トランス脂肪酸』という言葉を聞くと、最も悪いものを想像します。しかし、朝に飲む牛乳や、ヨーグルト、バター、チーズに含まれるトランス脂肪酸は、工業的な部分水素添加油に由来するものとは同じではありません」と、研究の共同責任著者で、リーディング大学のイアン・ギブンズ氏は声明で述べました。
ギブンズ氏はエポックタイムズに対し、天然と工業由来のトランス脂肪酸の違いを正確に反映した食品表示制度は、現時点では把握していないと述べました。また、今回の研究結果が表示制度の見直しにつながることを期待していると語りました。
食品全体として考える
今回の研究結果は、乳製品の摂取を、2型糖尿病リスクの低下、腸内環境の改善、認知機能の維持、さらには心疾患リスクの低下と関連付けた、これまでの研究を補うものです。ただし、これらは主に関連性を示したものであり、乳製品の摂取が直接これらの効果をもたらすと断定するものではありません。
ギブンズ氏は、今回の研究から、バランスの取れた食事の一部として乳製品を摂取することは、「心臓への影響を過度に心配する必要はない」と考えられると述べました。
「食品表示に『partially hydrogenated oil(部分水素添加油)』や『partially hydrogenated soybean oil(部分水素添加大豆油)』と記載されている場合は、その製品を避けた方がよいでしょう」と、ニューヨークのNorthwell Healthに属するPlainview Hospitalの上級栄養士で、今回の研究には関与していないダイアナ・クサ氏は、エポックタイムズに語りました。
Case Western Universityの栄養学部長であるホープ・バルコウキス氏は、この分野の研究は現在も進展していると述べています。
飽和脂肪酸やトランス脂肪酸には複数の種類があり、種類によって健康への影響が異なる可能性があります。そのため研究者は、飽和脂肪酸の総量だけでなく、食品に含まれる脂肪酸全体の構成や、ほかの栄養素との組み合わせを含む「食品マトリックス」全体を考慮する必要があると、彼女は述べました。
「飽和脂肪酸の総量だけを見るのでは不十分です」
訂正:以前の記事では、乳脂肪の摂取量が多いほど健康リスクが高まるという誤った記述がありました。エポックタイムズはこの誤りを深くお詫び申し上げます。
(翻訳編集 日比野真吾)
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