為政者の過ち

【大紀元日本12月5日】19世紀後半から続いた混乱を経て1949年中華人民共和国が建国されたが、中国共産党は、共産主義革命を掲げ、結果として現在の中国がある。激烈を極めた共産党内の権力闘争を経て不倒翁と称された_deng_小平氏が、表舞台に再登場し80年代からの中国経済発展の礎を築いたのは今や歴史的事実であり誰も否定する事は出来ないが、彼の業績の中で天安門事件と後継者選びだけは後世の歴史家が晩節を汚すものと判断することになろう。彼の後継者が江沢民氏であり、その軌跡を辿れば自ずから現代中国の矛盾点が浮き彫りにされて来る。中でも印象に残るのは、国内に発生した計画経済から生じた無数の矛盾点を隠すために内憂を外患に転じ、抗日戦争という本来中華民国が主役であった事件を、あたかも共産党の成果に置き換え喧伝した事であろう。70年代の中国で「共産党が無ければ中国は無い」との唱歌が流行したこともあったが、江沢民氏が国家主席になった頃には、既に多くの矛盾点が顕在し始めていたのである。残念なことに江沢民氏は、せっかくのチャンスを生かせなかった。改革こそ指向したが、肝心の共産党自身の改革は彼の念頭にはなかったのである。古今東西の殷鑑は、どの国家でも王朝や政権党の没落は為政者と官僚の硬直化や腐敗が原因である事を知っていたであろうに。国家主席として建国50周年を祝い人民服を纏った江沢民氏が人民解放軍精鋭機甲部隊を閲兵する姿は絢爛というよりむしろ異様であった。その姿は在りし日の_deng_小平氏よりは、却ってナチスドイツのヒットラー総統を彷彿とさせるものですらあった。大口径砲を搭載した新型重戦車群が横一線文字通り一寸の狂いも無く整然と行進するテレビの映像を見ながら、人民解放軍は果たしてどの国を仮想敵国としているものなのか自問自答した視聴者も少なくなかった筈である。確かに過去、戦車が地上戦の花形であった時代もあったが、第2次世界大戦の独ソ戦の中でも戦史に残るクルスク大戦車戦から既に半世紀以上も過ぎた現在、大平原に咆哮する戦車戦はいまや映画のなかにしか存在しないという時代である。恐らく後世の歴史家はマインカンプと毛語録の違いに困惑するであろう。中国共産党は世界の大国である中国の執政党として既に賞味期限を越えてしまったようだ。

第2次世界大戦後の日本は廃墟の中から奇跡的復興を成し遂げたが、財閥の解体から農地改革による地主の没落、小作農の解放等、明らかに連合国は日本を無害な農業国にしようとしたにも拘らず日本が急速に産業を復興させた主因は日本人の勤勉さもさることながら、軍備という言わば無用の長物への投資を極小化し、全ての資源を産業復興に傾斜配分したからである。勿論、冷戦という米ソ間の狭間にあって自衛隊という分野にも結果的に相応の資源が配分されたという事実もあるが、本流は飽く迄、為政者と国民が資源を再生産に集中した結果であった。当然、全ての金融機関は、国家の基本戦略である生産への貢献が求められ、その結果かなりな歪みこそ残したものの産業復興の有効な潤滑剤となった。政府系金融機関は勿論、都銀、地銀から弱小金融機関に至るまで、其の趣旨は徹底していたのである。

翻って、中国を見れば、当初基幹産業を担う国営企業が集中的に育成され、4大国営銀行が積極的に資金を集中投下し、相応の成果を収めたが、重工業が発展するにつれ当然のことながら重厚長大に代表される軍需産業も巨大化してしまった。外国からの侵略に備えるべく内陸部に重工業地帯群を創設、強化し今日に至っている、中国も長大な国境線を持つ国家であり、それなりに国防という観点も必要であろうが、果たして中国に攻め込むような愚かな国家があるのだろうか?超大国の米国にすらとても出来そうもない話である。今や時代が変わりナポレオンやクラウゼヴィッツに代表される大会戦や兵力の一点集中はない。まして旧ソ連軍型の機甲部隊による集中突破や縦深攻撃は人工衛星によって直ぐ察知されてしまう時代である。いみじくも最近、東京都知事が米国で中国と戦えば米国は敗れると断言した由であるが、屍山血河の人海戦術すら厭わぬ中国に対して無謀にも宣戦するほどの馬鹿な国家は昔の日本帝国陸軍はいざ知らず21世紀には最早存在しない。 もともと中庸という言葉は中国人が発明した言葉ではなかったのか? 軍備も中庸にすべきではないのか? 平和を守ると称しながら過度の軍備増強が悲劇を招いた実例は各国の青史に枚挙に暇が無いではないか?

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