中国の人権弾圧に抗議を!-これが本来の「アジア外交の再建」だ

いつも国民の知る権利を振りかざすマスコミだが、本当に大切なニュースとなると、むしろ無視を決め込む。今回もまたこの流儀で押し通すつもりのようだ。

というのは、中国政府当局が今最も恐れているとされる人権活動家・高智晟弁護士が8月15日、山東省で不当に拘束され、以後消息が全く伝わってこないという事件が生起しているにもかかわらず、日本では一切報道されてさえいないからだ。米国国務省は既に北京のアメリカ大使館を通じて強い抗議の意思を伝えたとされるが、他にも英、独、及び他のEU諸国が重大関心をもって事態を注視しているという。事態進展のありよう一つで、これは今後の中国の国際的立場をさえ支配しかねない重大事件になる可能性すらある。

むろん、日本人大多数にとっては、「高智晟、WHO?」というのが率直なところでもあろう。この人物についての簡単の紹介記事さえ、恐らく日本ではこれまでほとんど書かれたことはなかったし、書かれたとしても注目されることなど全くなかったからだ。今年四月、米国議会上下両院が氏に対する「支持決議」を満場一致で可決した、などというニュースは日本では話題にされることすらなかった。

それでは、高智晟弁護士とは何者か。詳細は日本在住の法輪功関係者が運営する「大紀元」なるサイトをご参照いただきたいが、当局の圧力に屈せず、社会的弱者のために無料で仕事を引き受け、人権救済などの活動をしている弁護士だという。といえば、われわれには中国版「赤ひげ弁護士」といった連想が湧くが、中国では司法すら当局の行政管理手段となっており、こうした中で権力の横暴から民衆の権利を守るのは、まさに命懸けの行為なのである。氏はそうした中で、例えば迫害されている法輪功関係者のために体を張って弁護し、彼らの人権問題について党の最高リーダー層に多数の公開書簡を送り、当局の政策を厳しく批判する、などといった活動を展開してきたのである。その意味で、氏は大陸の民衆に中国の良心の存在を示す「正義の灯台」とさえ見なされてきたという。

この高氏拘束の背景、及びこれがいつまで続くのかについては色々な分析があるようだが、要はこうした中国当局の暴虐な人権無視の現状に対して、われわれがいかなる認識をもち、いかなる抗議の意思をもつかが問われているということだ。マスコミなどは口を開けば「アジア外交の再建」などと尤もらしいことをいうが、われわれが今本当に「再建」しなければならないのは、むしろこうした中国の民衆との関係であり、問題はその中国民衆の真の思い・現状をどれだけ正確に把握し得ているか、ということなのだ。

「大紀元」の英文サイトによれば、中国の当局が今やろうとしているのは、高弁護士に薬物注射をしてその正常な精神作用を奪うことではないか、という。これはかつて同じく当局の拘留下に置かれた中国民主活動家の経験から推測されることだが、それはかつてソ連当局が反体制活動家に対して頻繁に行った蛮行でもあるといえる。その意味でも、氏に対する国際的関心が氏の最大の安全の保障でもあることを指摘したい。

いずれにしても、日本はこれまでこうした中国の人権弾圧について、抗議はおろか明確な意見表明をすることさえなかった。しかし、今求められるのは、日本が中国の自由・民主・人権に対し重大な関心を抱いていることを示す強いメッセージの発信であり、われわれは独裁政権の圧制下にある中国民衆への関心を失ってはいないという意思表示だと思うのである。それが本来のあるべき「アジア外交の再建」であり、独裁政権の言い分の前に無条件で拝跪することでしかない「アジア外交の再建」なぞ、むしろ自由を求める中国民衆への敵対行為でしかないことを知るべきなのだ。

日本政策研究センターホームページにより転載
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