【モンゴル「草点」便り】マンホールチルドレン①

【大紀元日本1月12日】モンゴルの冬に雪がたくさん降り、溶けた雪で地表が氷結します。氷結した大地の下に埋もれて、食べる草を失った家畜が餓死します。これがモンゴルの天災といわれるゾド(雪害)です。夏のガン(干ばつ)とゾドが重なると被害は深刻です。モンゴルが1992年に民主化されて初めてのゾド、しかも過去30年間で最も寒いといわれた冬が1999年に襲来します。1999年から2002年まで、繰り返し襲ったガンとゾドによって、約1000万頭の家畜が飢えと寒さで死に絶えました。

モンゴルの遊牧民は五畜(牛・馬・羊・やぎ・ラクダ)を飼っています。五畜すべてを飼っているのではなく、この中から暮らしの必要に応じて、何種類かを選択して飼っています。モンゴルのゲル(住居)を見知らぬ人が訪れると真っ先に、五畜を狼などから守る番犬の、丁重なお出迎えを受けます。放し飼いの番犬の吠え立て方は元気一杯で、がぶりと食らい付かれるかと思うほどです。ご主人がゲルのドアーを開けて顔を見せ、番犬をしっかり制止してくれるのを待ちます。決して激しく吠えている番犬の立場を無視してドアーまで、間違っても恐る恐る近寄ってはいけません。遊牧民の番犬は遊牧生活の仲間として、なくてはならないものです。遊牧民の勇ましい番犬に、敬意を表しましょう。決して可愛いペットなどではありません。

家畜と番犬と助け合うファミリーが、遊牧民の生活基盤のすべてを支えています。家畜は食料であり、衣服や家屋の素材です。草原に散らばる糞はいつでも手に入る、貴重な燃料源です。遊牧民は大いなる自然のめぐみから、生活資源を調達して暮らしています。モンゴルを襲う天災によって家畜が死滅すると、遊牧民は生活の基盤そのものを失う大打撃を受けます。遊牧生活を捨てて、都会や町へ避難する牧民が発生します。離散したモンゴル家族が産み落とした、マンホールチルドレンが社会問題になりました。モンゴル国の首都・ウランバートルの冬のマンホールの蓋を開けると、地下の坑道を住居にし、寄り添って暖をとるように、子ども達が生活しています。地下を走る暖房用温水管の温もりは、子供たちがマンホールで発見した唯一の暖房器具です。モンゴルの冬は、マイナス30度を超えます。家を失った子どもはとても戸外で、モンゴルの冬の青空の下で過ごすことは出来ません

モンゴルは1990年代初頭の民主化後に、ソ連の経済援助を失って国家経済が過渡的に破綻し、多くの経済難民を生み出しました。生活苦からの離婚による一家離散が、社会現象として目立つようになります。子どもを見捨てる親も現れ、盗人が横行し人心が荒廃しました。1999年の天災がさらに追い討ちをかけ、遊牧民の最貧層が家畜を失って都会や町へ避難を求めて流れ込み、モンゴルに新たな都市問題を生み出したのです。マンホールチルドレン現象から、さらに事態は深刻化しました。子どもから大人までマンホールファミリー化したといわれる、マンホール遊牧民の時代に突入したのです。

マンホールチルドレンに、もちろん両親はいません。孤児院を造って収容すれば解決するという問題ではありません。手厚いケアーが必要です。マンホールの中はとても不衛生で、ネズミやゴキブリが走り回り、悪臭と汚物に満ちた悲惨な世界です。それでも子ども同士が助け合う、子ども達の共和国が出来ています。マンホールに棲む子ども達に「楽しいことは?」と尋ねると、返事がありませんでした。この現状に涙する「日本人のほんの少しの優しさ」が、マンホールチルドレンの救援に、さわやかな光を投げかけています。日本の「ホンノ少しの優しさ」のボランティアの姿を、次回お伝えします。

(ヤポンバヤル)