「デモが許されない国」で演じられたデモ

【大紀元日本9月30日】「ブログで『デモ』という言葉も書き込めない国で、やっとデモが許可されたよ」と、9月18日、中国で最も人気のあるブログライター・韓寒はコメントした。

9月18日は、満州事変勃発の引き金となった柳条湖事件の記念日で、中国ではこれまでしばしば、反日感情を高めるために利用されてきた。79年目という中途半端な年での今年のデモはちょっと珍しい。北京、上海、深せん、香港など少なくとも7つの都市で行われ、心のうっぷんを晴らす機会として中国人が参加した。中国共産党政権の工作が窺える小規模イベントだった。

最近の中国漁船衝突事件は、多くの中国人の怒りを買ったようだが、たとえ今回のように小規模なものでも、政権の黙認または奨励がなければ、現在の中国では起こりえない。

北京では、中国政府に対して自分の権利を請願している人々に、9月18日前に、「政府認可」の日壇公園(日本大使館の近く)でのデモに参加するよう、呼びかけの電話がいろいろなところから入ったという。

いつもは政府の癒着や不正に関して請願している人々は、今回のデモで中共政権は人々の「愛国心」を煽ろうとしていると指摘していた。自分たちの主張を公表する機会として、とりあえず参加を決めた者もいる。一般に、公共の場で抗議行動に出た場合、抑圧・拘束や嫌がらせを受け、北京から追放されるのが常だからだ。

参加者数と主張内容のコントロール

しかし、中共政権は、デモ参加者の数をコントロールできる程度に抑えた。北京と上海では、武装警官が見守る中、数十名の参加者が反日スローガンを叫んだに過ぎなかった。

その他の都市では、警官の数を超える数百人が参加したため、横断幕やプラカードのほとんどは警察が押収した。香港以外の都市では、デモは1時間以内に警官によって解散させられている。

また、当局は、日本を攻める声以外は、一般に届かないように取り計らっていた。

深せんからの請願者 Yuan Peiweiさんは、請願中に警官に殴られた自分の写真を掲げ、「癒着反対」と北京のデモで叫んだ。目撃者の話によると、まもなくYuanさんは警官に逮捕された。デモの協調人が、警官に釈放を求めたところ、Yuanさんは窃盗の容疑で逮捕されたという答えが返ってきた。

政府に異議を唱えたり、人権運動で活動する人のほとんどは、デモへの参加を許されなかった。北京の市民権運動の活動家であるLiu Anjunさんは、かなり前から、公安部の代行人に、反日デモに参加しないよう警告されていた、と本紙記者に伝えている。9月18日、Liuさんの機関で働く3人のボランティアは、ホームレスの請願者に食べ物を届けに行った後、行方不明になった。連絡が途絶える前、これらのボランティアはLiuさんに、公安部の代行人に尾行されていると電話で伝えている。

同じく、活動に携わるZhang Huiさんは、9月18日の外出中、警官に尾行されたと語っている。Zhangさんによると、北京では多くの活動家や異議を唱える人々が当日、同様に自由を制限され、他の都市では、実際に拘束された。

「フォークダンス以外の何ものでもない」

ワシントンDC在住の中国問題の専門家・石藏山氏は、次のように分析している。「中国共産党は火遊びをしているようなものです。愛国心に本当に火がついたら、国民は、中共がいかに自国を害してきたかに気づくことでしょう。そうなれば、すべての怒りが中共政権に向けられ、吐き出されます」

事実、上海でのデモで、警官が日本領事館に通じる道をふさいだ際、「(政府は)弱腰で外交不能」というシュプレヒコールが始まった。

「市民の権利を主張する平和的なデモが許されない国で、全く自分の身にふりかからないような国外の事件に対してデモを行うのは全く無意味」と韓寒は書き込む。「こんなデモは、フォークダンス以外の何ものでもないね」と中共政権のやらせを軽く流したブログは、まもなく削除された。

(執筆=ミシェル・ユー、翻訳編集=鶴田)
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