【大紀元日本7月10日】中国後漢時代の史書『漢書芸文志』(班固、78年)に、「占いごととは百事の兆しを示し、善悪の徴候を窺うことである。『易』は占いごとによって未来を予測すると言われている。多くの方法があるが、夢から占うことが最も重要な方法である。故に周王朝では、夢を占う役人を設けていた」という記載がある。この記載からも分かるように、夢を解読することは古くから非常に重要視されてきた。夢から得られる情報量は他の占い方法より遥かに多く、夢の解析は自分自身や社会、自然を認識するうえで非常に有効だ。
未来を予見する夢
夢の中で未来の様子が見えたり、未来に関する啓示を受けたりした後、現実の世界で同じ現象が起こる場合がある。夢から与えられる予見は、自分や家族、他人に関する事にとどまらず、社会や国家に関するものまで存在する。
知識を与えてくれる夢
夢の中で誰かが知識や技術を教えてくれることがある。例えばロシアの科学者、ドミトリ・メンデレーエフ(Dmitrij Ivanovich Mendelejev)が夢の中で元素周期律表を発見したのは、その顕著な例である。1869年2月17日、元素の原子量と化学的特性との関係について考えていたメンデレーエフは、そのまま眠りに落ちてしまった。居眠りの最中、夢の中ですべての元素が原子量の順に並んだ表を見た彼は、目を覚ますと即座にその表を紙に書き写したという。この表によって彼は、「元素を原子量の順に並べると化学的特性が周期的に繰り返される」という発想を得た。
また、孔子は夢の中でよく周王朝の政治家である周公旦から、国を治める道理や周王朝初期の礼儀制度の内容を教えられていた。しかし晩年になるとそのような夢を見なくなり、「私はもう衰えてしまった。最近は周公の夢を全く見なくなってしまった」と悲嘆したという(『論語・述而五』)。
出生を予見する夢
赤ちゃんが生まれる前、両親や祖父母がこれから生まれてくる子供の特徴や運命を予見する夢を見ることがある。唐代の詩人、李白が生まれる前、李白の母親は夢の中で太白金星を見た。そこで、生まれた子を李白、字を太白としたという。また、北宋の詩人である郭祥正が生まれる前、郭祥正の母親は李白の夢を見た。成長した郭祥正は詩人になり、その詩は李白の風格を纏っていたため、郭祥正は李白の生まれ変わりであると言われていた。
死を予見する夢
自分や他人の死を予見する夢を見ることもある。アメリカ合衆国第16代大統領エイブラハム・リンカーン(Abraham Lincoln)は、1865年4月14日に暗殺された。暗殺される数日前、リンカーンは夫人と警護を担当していた親友のワード・ラモンの前で、不思議な夢を見たと語っている。その夢の中で、多くの人が嘆き悲しんでいる声を聞いた。その夜、リンカーンは自分が実際にベッドから起き上がり、ホワイトハウスの部屋から部屋へと彷徨っているように感じていた。大勢がすすり泣いている声が聞こえたのでいくつかの部屋を周ってみたが、人の気配は全くなかった。原因を探ろうとイースト・ルームに立ち寄ると、そこには棺が置かれており、棺を守るように兵士たちが立っていた。驚いたリンカーンが「ホワイトハウスで死んだのは誰だ?」と兵士に尋ねると、兵士は「大統領です。大統領が暗殺されたのです」と答えた。すると突然大きな悲嘆の声が辺りを覆い、リンカーンは目が覚めたという。
故人が現れる夢
夢の中に故人が現れることもある。夢の中に現れるのは身内や先祖、親しい友人、あるいは自分に恨みがある人、まったく知らない人など、様々なケースがある。2005年12月、栃木県旧今市市で当時小学1年生の吉田有希ちゃんが連れ去られ、殺害された。9年後の2014年6月3日、警察は32歳の男を逮捕した。逮捕された勝又拓哉容疑者は「有希ちゃんが夢に出てくるから自供したい」と語り、取り調べに素直に応じた。
鬼神と関係がある夢
夢の中に鬼や神様が現れて、暗示や啓示を示す場合もある。『晋書』には次のような事例が記載されている。中国五胡十六国時代の前秦の第3代皇帝の苻堅(ふけん、在位357~385年)の母親は、息子が生まれますようにと祠堂で祈った日の夜に、神人と交合して彼を生んだ。生まれた苻堅の背中には「草付臣又土王咸陽」という赤い字があった。草付は「苻」の字になり、臣又土は「堅」の字になる。つまり苻堅は咸陽の王になるという意味だった。そのため「苻堅」という名前が付けられ、実際に苻堅は、咸陽の王となった。
動物に関わる夢
動物が恩返しに来る夢や、仇討に来る夢、何らかの啓示を与える夢を見ることもある。北宋時代に太宗の勅命を奉じて編集された類書『太平広記』に、次のような話が残されている。梁の劉之亨が南郡で官職に就いていた時、ある日、夢の中で李姓の人間二人が劉之亨の前で命乞いをした。翌朝、知り合いが二匹の鯉(中国語の李と鯉は同じ発音)を持って来た。劉之亨は「昨夜の夢に関係があるのではないか」と考え、この二匹の鯉を放してやった。その晩、昨夜の夢に現れた二人が再び夢の中に現れて礼を述べ、「あなたの寿命は一年延長されます」と語ったという。
信仰に関係がある夢
神はその姿を顕現させて人々に直接教えを与えることはしない。しかし、夢に託して啓示を与える場合があり、『後漢書』には次のような事例が記されている。「漢朝の永平年間、漢明帝は空から黄金色の人間が飛んで来る夢を見た。翌日大臣たちを集め、この夢の意味を尋ねた。外交事務を担当する傅毅大臣が、「西域には佛陀と呼ばれる神様がいると聞いています。陛下が夢の中で見た黄金色の人は、この佛陀ではないでしょうか」と上奏した。傅毅の話が理にかなっていると考えた明帝は、使節を西域(インド)に派遣し、佛陀を訪ねさせた。インドに辿り着いた使節の蔡愔は佛陀の弟子の迦葉摩騰(かしょうまとう)に出会い、彼を漢国に招いた。明帝は迦葉摩騰を手厚くもてなし、洛陽城西門外に精舎(白馬寺)を建てて、佛法を広げさせたという。
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