分析:中国入りの願望強いフェイスブック 宣伝部長とも会談
世界最大のSNSフェイスブック(Facebook)創始者マーク・ザッカーバーグ氏は、中国政府主催の発展フォーラムに参加するため訪中している。それが開催される前から、同氏の行動に注目が集まっている。大紀元コラムニスト・周曉輝が中国政府とザッカーバーグ氏の思惑を分析する。
ザッカーバーグ氏は、19日には中国共産党序列5位の劉雲山・政治局常務委員と会談し、その前日の18日には、大気汚染警報が出されるなか、天安門広場前を笑顔でジョギングしている様子を自身のフェイスブックに上げた。
情報統制のため、フェイスブックは中国本土では使うことができない。会談したのは、ネット検閲や規制も指示する共産党宣伝部のトップである劉氏。中国のネットでは「これほど滑稽な会談は見たことがない」「企業と話し合うが、ネットユーザーたちとは話合わない」「フェイスブックを知っているのだろうか」などと、けげんな声が相次いだ。ザッカーバーグ氏の無謀なランニングも、共産党への機嫌取りではないかと、同氏への悪印象につながった。
巨大市場を狙うザッカーバーグ氏
ザッカーバーグ氏にとって、中国という巨大市場が魅力的に映っているようだ。フェイスブックのデータによると、ユーザ数は15億人で、世界80%の国に同ユーザがいる。その数に、中国は含まれていない。企業の持続的発展と株価上昇のため、中国市場の攻略を図るのは容易に想像できる。
しかし、自由主義の国から誕生したフェイスブックが、共産党による一党独裁体制の中国に入るには簡単ではない。SNSという口コミが広がる手法は、個人のプライバシーやビジネスの機密、また政治、軍事情報を漏らすことも容易となる。また、情報封鎖の厳しい中国にとって、海外の情報を自由に探し集めるプラットフォームとなるSNSは、共産党の脅威となる。
2008年、フェイスブック中国語版は中国本土の簡体字、台湾と香港のそれぞれ繁体字の3種類を設けて開かれた。しかし2009年7月、新疆ウイグル自治区の大規模デモに共産党が武力鎮圧した後、フェイスブックと動画サイト・ユーチューブ(youtube)、簡易投稿サービス・ツイッター(Twitter)は使用できなくなった。デモ参加者の交流手段となる、というのが理由だった。
もしも再参入なら、中国でどうふるまうか
フェイスブックがもし中国市場に再参入するなら、他の外国企業と同じように、共産党のルールに従わなくてはならないだろう。共産党はフェイスブックを「審査」し、利用者の情報開示やプライバシーポリシーの改定を要求するかもしれない。そうなれば、信用と信頼でつながるSNSの世界に大きなマイナスとなる。
ザッカーバーグ氏の中国入り願望は強い。もしかしたら、世界のつながりを切り離して、単独で一つの中国式フェイスブックを立ち上げる可能性もある。
北京も、ザッカーバーグ氏を拒絶せず、近づいているのがわかる。中国市場が低迷し、外資が撤退していくなか、世界的大企業が中国に投資することに諸手を上げて歓迎している。ザッカーバーグ氏は2014年、清華大学の経営管理学院で国際顧問に就任、政治局常務委員の王岐山・中央紀律検査委員会書記とも面会した。2015年の習近平主席の訪米時には握手を交わし、さらに今年は、政治局常務委員である劉雲山・宣伝部長と会談、李克強首相ら政府要人が出席した発展フォーラムに海外顧問として出席した。
しかし、北京は、フェイスブックに合わせて共産党のルール基準を下げたくないだろう。19日の会談で、劉氏は、習近平政権の掲げるインターネットの統制に関する取り決めを強調し、共産党のルールに従うよう暗示した。
北京もザッカーバーグ氏も、妥協点を受け入れて中国市場の再参入を果たしたとしても、フェイスブック側は中国の環境にがまんできるだろうか。グーグルのように撤退してしまうかもしれない。
いまのところ、ザッカーバーグ氏は再参入を断言しておらず、北京も報道はない。双方とも、これについて慎重な姿勢を保っている。
(翻訳編集・佐渡道代)