中国「大トラ」裁判の舞台裏

公判を待つ腐敗官僚の奥の手 「懺悔指南書」約500万円

中国共産党の第十八回全国代表大会以降、160人を超える「大トラ」が汚職容疑により失脚した。公判前、こうした汚職官僚らは金に糸目をつけずライターに『懺悔指南書』を準備させていることが香港メディアにより明らかになった。彼らは法廷でこの指南書のシナリオ通りに「幾度も嗚咽」するなどして裁判官らの同情を誘い、極刑を免れたり減刑されたりしているという。懺悔指南書の作成を行っている執筆者のことは「槍手(スナイパー)」と呼ばれている。

 『懺悔指南書』一部は約500万円

共産党官僚の中から大量の汚職官僚を摘発して懺悔させたことは、反腐敗運動を指揮してきた新政権にとって大きな収穫となったようだが、香港の雑誌『争鳴』2016年5月号によると、その懺悔の様子が紀検監察や司法関係者を「感動」させているという。裁判官は腐敗官僚の用意したシナリオに沿って繰り広げられる演技を減刑の基準としているほか、彼らに対し大きな借りを作ることになる。

消息筋は懺悔指南書ビジネスについてこのように説明している。「腐敗官僚の指南書作成を請け負う仕事はよい稼ぎになる。だが、かなり強力なコネが無いとありつけない」。1人の腐敗官僚専門に使われる指南書を作成し、そこに確実なコネで保証を付けると、30万元(約500万円)の値段が付くという。

腐敗官僚はこの指南書を使って、公判前に効果的なアピールの仕方を学んでいるため、ほとんどが法廷に立つと「幾度も嗚咽を繰り返し」ている。もっと効果的な方法は「感情が高ぶる余り、泣き止むことができない」こと。

こうした様子を見続けている北京のある政権オブザーバーは「ほとんどが演技だ。腐敗官僚は役者ぞろいだ。普段から演説台に立ち慣れているから、法廷に立つと演技に一層熱が入る」と一刀両断。力量のある「スナイパー」が作成する指南書には、30万元という高値が付くことも決して珍しくはないという。こうした指南書は、まさに壮大な舞台劇を描くシナリオそのもので、死刑を宣告されるはずが2年間の執行猶予で済んでしまったり、死刑が無期懲役になったりするという。

 腐敗官僚は獄中でも買収行為

大金をつぎ込んで優秀な「スナイパー」の手による指南書を手に入れることは、腐敗官僚にとって少しでも刑を軽くするための重要な手段となっている。効果的な指南書が拘留中の腐敗官僚の手元に渡るまでには「労務費」として少なくとも10万元以上が動いている。ただし、あまり費用をかけたくないと考えている者は、紀検監察職員に(わいろを渡して)別の人物が使用した指南書をサンプルとして入手し、自分なりに脚色を加えながら、それを書き写して使う。

一部の腐敗官僚は看守を買収して、他の誰かに自殺をするふりをさせ、それを懸命に助ける善人を演じるといったことまで行っている。もちろん、この「善行」により減刑される可能性を見越してのことだ。

 

 本音「共産党終焉の日は近い」

一部の腐敗官僚の陳述にはこうしたあからさまな工作は見当たらない。だがそれは決して本人が心底悔い改めているからではないようだ。例えば、ある中央候補委員は年末の公判における陳述の時に、全ての罪を潔く認めたうえで、悲痛な涙を流した。

しかしその家族に親しい人物がこうささやいた。「現政権がじき崩壊するのは分かりきったことだろう? 今は命をつなぎとめることが先決だ! 明日にもその日が来るかもしれない。そうすれば明後日には晴れて放免されるというわけだ」。この本音を聞いた人たちは「腐敗官僚の全員がバカという訳でもないらしい」とむしろ感嘆したという。

 今年が「大トラ裁判年」となる

昨年から、中央規律検査委員会はウェブサイトで失脚した腐敗官僚の『懺悔録』欄を設けている。彼らの懺悔を一般に公開することで他の官僚らに警告しているのだ。

ここにはさまざまな懺悔録が公開されているが、それらに対し厳しい目を向けている国内メディアもある。一部の腐敗官僚の懺悔には苦境を訴えたり、これまでの功績を並べたりして同情を誘い、減刑を狙っているものがあるが、いずれも偽りの懺悔としか受け取れない。

これまでに160人余りの「大トラ」が失脚し当局から調べを受けたものの、実際に起訴に至った案件の数はこの人数と比較するとまだまだ少ない。国内メディアは、案件の処理スピードを考慮すると、今年が「大トラ裁判年」となるだろうと報じている。

 (翻訳編集・桜井信一/単馨)

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