暗躍する中国マネー
米議会委員会、中国国営企業の米企業買収に禁止求める
米議会の米中経済安全保障調査委員会 (USCC)は16日公表の年次報告書で議会に対し、中国の国営企業による米企業の買収を禁止するべきだと勧告し、対米外国投資委員会(CFIUS)に買収を禁じる権限を付与する法改正を要請した。
米中間の経済問題が米国家安全保障へ影響を調査するUSCCは、中国政府の米企業への強まる支配を抑止するためだとしている。
中国マネーによる海外企業買収が急ピッチに増えている。ロイター通信によると、今年に入ってからの対米買収総額は過去最高の645億ドル(約7兆300億円)に達した。
外国からの投資を審査する米政府機関のCFIUSも中国マネーへの警戒感を強めており、中国民間・国有資本による買収はいずれも米経済及び国家安全に顕著なリスクをもたらしていると報告した。
今年では中国国営企業による、米コンピューター周辺機器メーカー、業界トップ企業の「ウェスタン・デジタル・コーポレーション」の買収案(38億ドル、約4142億円)が却下されている。
(翻訳編集・叶子)
関連記事
世界最大のシンクタンク、経済協力開発機構(OECD)が10月末に発表した報告書によると、今年上半期で、他国による米国への直接投資額が過去最高の2000億ドル(約24.5兆円)に達した。外国企業による米国企業の事業買収が急増していることが要因の一つだという。
香港大手メディアグループの南華早報集団は今月14日、中国の電子商取引(EC)最大手のアリババ・グループの子会社にメディア事業などを売却すると発表。主要媒体である英字紙サウスチャイナ・モーニング・ポストの他に、雑誌や人材事業、イベント開催などを譲り渡す。売却価格は20億6060万香港ドル(約321億円)で、売却益は14億2600万香港ドルとみられている。
世界的に有名なニュース写真や映像を配給する「コービス・イメージズ」が、中国企業に買収された。コービスは1989年の天安門事件に関する写真も大量に保有しており、多くの海外メディアは、これらの写真が自由に使用できなくなるのではと懸念している。香港メディアが今月25日に伝えた。
中国国有化工大手の中国化工集団(ケムチャイナ)は2月初め、総額430億ドル(約4兆8600億円)でスイスの世界農薬最大手シンジェンタを買収すると発表した。中国企業として海外企業合併・買収(M&A)案件の中で過去最大規模となった。28日付ウォールストリート・ジャーナルによると、現在同社はシンジェンタの買収に向けて、中国国有投資金融大手中信集団傘下の中信銀行や欧州の金融大手から300億ドル(約3兆3900億円)以上の融資を受けた。
米通信社ブルームバーグの報道によると、中国の保険会社、安邦保険集団(以下、安邦)が65億米ドル(約7388億円)で米投資会社ブラックストーンから北米と欧州で高級ホテルを所有している米不動産投資信託会社ストラテジック・ホテルズ・アンド・リゾーツを買収する計画だという。実現すれば、中国企業による米不動産買収の過去最高額になる。
台湾鴻海精密工業傘下の富智康集団(FIHモバイル)は5月18日、フィンランド企業のHMDグローバルとともに、米マイクロソフトとの間で、マイクロソフト傘下「ノキア」ブランドの従来型携帯電話(フィーチャーフォン)事業を買収することで合意したと発表した。買収金額は3億5000万ドル(約385億円)で、今年下半期に買収契約を終了させるという。