よくないと思いつつ、皆が持っているから…と、ついゲーム機を子供に買い与えてしまう親も多いはず。いまや10人中9人の子供がゲーム機を持っている時代。ゲーム機は子供の脳にどのような影響があるのだろうか。
未発達な子供の脳に悪影響
アメリカの神経学専門誌『Newrology Now』(2014年発行)に掲載された論文によると、ゲーム機は欲望や衝動の抑制をつかさどる「前頭前皮質」に影響を与え、未発達の子供の脳の場合は、神経回路を変えてしまうという。この脳の部分は、長期的なよい報酬を得るために、短期的な満足感を先送りにするという判断をするところ。例えば、今はゲームを我慢して、来週のテストに備えて勉強しようと選択することができるのも、この脳のおかげだ。前頭前皮質が最大量まで成熟するのは、25歳~30歳ごろだと言われている。
一方、スピード感や予測不可能であることのワクワク感、スコアを勝ち取った後の達成感があるのがゲーム。手っ取り早く満足感を得られるゲームは、前頭前皮質が未発達の子供たちにとってハマりやすく、依存症になりやすいのだ。
麻薬に匹敵するゲーム依存
コネチカット大学メディカル・スクールのデービッド・グリーンフィールド博士は、「ゲームで遊ぶと、脳はドーパミンを大量に放出する」と指摘する。もちろん、ドーパミンによる「気持ちいい」感覚は一時だけのもので、長続きはしない。過去には、ゲームで遊んでいる時に放出されるドーパミンの量は、覚せい剤を静脈注射した時に匹敵するという報告もあった。(科学誌『Nature』1998年掲載の論文)。ゲーム依存症の子供からゲームを取り上げると、落ち込んだり、問題行動を起こしたり、攻撃的になったりするのはそのためだ。
暴力的なゲームの影響はどうだろう。ゲームと実際の暴力行為の関連性については科学者の間で意見が分かれているが、もともと攻撃的な性格を持つ子供には悪影響がありそうだ。なぜならば、そのようなゲームは攻撃的な行動をよしとするし、暴力によってスコアが上がるなどの報酬が得られるからだ。暴力的なゲームを10分~20分プレーするだけでも、攻撃的な考えを増幅させると専門家は指摘する。
どのような形態のゲームであれ、大人がしっかりと監督しなければ、子供はゲームに依存しやすい。ドーパミンを大量に放出し、脳の前頭部をほとんど停止させるゲーム機の前で、「子供は8時間、10時間、25時間、36時間でも座り続けてプレーしてしまうのです」とグリーンフィールド博士は指摘している。
(文・郭丹丹)
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