電気自動車メーカー、インターネット事業など多角的な事業をもつ中国大手の楽視グループ(LeEco)は米大手テレビメーカーのビジオ(Vizio)社の買収を取りやめると発表した。そこには中国共産党政権による厳しく規制がある(Ethan Miller/Getty Images)

中国大手、海外企業買収を相次ぎ中止 当局が規制強化か

  多角的な事業をもつ中国大手の楽視グループ(LeEco)はこのほど、米大手テレビメーカーのビジオ(Vizio)社の買収を取りやめると発表した。中国共産党政権が資金の国外流出を厳しく規制しはじめていることが主な原因だとみられる。専門家は今年、中国企業の対外投資は低迷期に入ると予測した。

中国でインターネット事業、スマートフォン、電気自動車製造、電子商取引など幅広く事業を展開するLeEco社は昨年7月、総額20億ドルの同買収案を公表した。同社の幹部はこのほど、撤回の理由について「中国の政策上の要因」と述べるにとどまり、詳細を説明しなかった。両社は今後業務提携に関する協議にきりかえるという。

今年に入ってから、同様の事例が複数報じられた。

不動産大手の大連万達集団(ワンダ・グループ)が米テレビ制作大手のディック・クラーク・プロダクションズを買収する案件(10億ドル)、大手保険グループの安邦保険集団が世界大手のホテルチェーン、スターウッドホテル&リゾートを買収する案件(140億ドル)など、相次ぎ白紙になった。いずれもLeEco社と同じ理由だとみられる。

昨年、中国の海外買収総額は前年の2倍強で同国史上最高の2250億ドルに達したが、同11月、資金流出を抑止する一連の政策が打ち出されてから、状況が大きく変わった。中国商务部(経済産業省にあたる)の発表によると、今年第1四半期の(非金融)対外直接投資(ODI)は前年同比48.8%減の205.4億ドルにと大きく後退した。

3月初旬、鐘山・商務部部長(大臣)は記者会見で、一部の企業の海外投資は「盲目的、非理性的だ」と厳しく批判し、規制強化を明言した。

一方、規制する業種を選別していることもわかった。1月のODIでは不動産分野は前年同比84.3%減、文化・スポーツ・娯楽分野は同93.3%減だが、技術を獲得できる海外の製造業やIT(情報技術)への投資はトレンドに逆行、それぞれ同79.4%、33.1%増となった。

当局の特別許可が必要になる海外送金の下限を、これまでの5000万ドル以上相当から500万ドルに引き下げるなどの同抑止策は、在中多国籍企業が収益を海外に送る経営活動にも支障をもたらしている。

(翻訳編集・叶清)

 

 

 

関連記事
香港大手メディアグループの南華早報集団は今月14日、中国の電子商取引(EC)最大手のアリババ・グループの子会社にメディア事業などを売却すると発表。主要媒体である英字紙サウスチャイナ・モーニング・ポストの他に、雑誌や人材事業、イベント開催などを譲り渡す。売却価格は20億6060万香港ドル(約321億円)で、売却益は14億2600万香港ドルとみられている。
世界的に有名なニュース写真や映像を配給する「コービス・イメージズ」が、中国企業に買収された。コービスは1989年の天安門事件に関する写真も大量に保有しており、多くの海外メディアは、これらの写真が自由に使用できなくなるのではと懸念している。香港メディアが今月25日に伝えた。
米通信社ブルームバーグの報道によると、中国の保険会社、安邦保険集団(以下、安邦)が65億米ドル(約7388億円)で米投資会社ブラックストーンから北米と欧州で高級ホテルを所有している米不動産投資信託会社ストラテジック・ホテルズ・アンド・リゾーツを買収する計画だという。実現すれば、中国企業による米不動産買収の過去最高額になる。
中国国内メディア「財新網」が9月20日、米紙「ニューヨークタイムズ」買収騒動を起こした中国人富豪の陳光標氏が商業活動と慈善活動において、粉飾や寄付金のだまし取りなどの不法行為を行っていたことを暴露した。また同記事は、すでに失脚した元公安部副部長の李東生氏と元統一戦線工作部(統戦部)長の令計画氏が、陳氏の後ろ盾であると指摘しており、陳氏をめぐる党内政治勢力闘争の様相を改めて浮き彫りにしている。
CVD装置の世界的製造会社であるアイクストロン社(本社ドイツ・ヘルゾゲンラス)の中国投資会社「福建宏芯投資基金(以下FGC)」による買収許可が、先月24日取り消され、再審査となることが発表された。9月初旬、この買収をドイツ経済省は許可していたが、安全保障関連の技術を同社が保有していることが問題視されたという。
米議会の米中経済安全保障調査委員会 (USCC)は16日公表の年次報告書で議会に対し、中国の国営企業による米企業の買収を禁止するべきだと勧告し、対米外国投資委員会(CFIUS)に買収を禁じる権限を付与する法改正を要請した。