中比首脳会談、南シナ海問題で火花 中国「軍事行動も辞さない」
フィリピン大統領府は20日、このほど北京で行われたドゥテルテ大統領と中国の習近平国家主席との会談で、南シナ海での両国間領有権問題を巡って両首脳が激しく論争し、習氏は軍事行動をも辞さないと発言したことを明らかにした。
「一帯一路」サミットに出席する際に習主席と会談したドゥテルテ大統領。アベリヤ大統領報道官が20日に発表した「フィリピンは西フィリピン海(南シナ海)の主権問題で中国と激論」と題する声明文で、「会談でドゥテルテ大統領は、国際常設仲裁裁判所の(フィリピンの主張を認める)判決内容に触れたが、中国の指導者は歴史の権利だとして判決を認めないと激高した」として、その際の一部やり取りを明記した。
話は、ドゥテルテ大統領が南シナ海の石油掘削作業をすると習近平主席に述べたところから。
ドゥテルテ大統領「私の見方では、地球の中に石油が埋まっているなら石油採掘する。あそこは私たちのものです。『中国のものだ』というのは、あなたの見方に過ぎない」。
習主席「やめてください。あれは我が国の領地です」
ドゥテルテ大統領「私たちは仲裁裁判所の判決に基づいています」
習主席「私たちには歴史的な権利があり、あなたたちのは最近できた法律です」
習主席は、南シナ海は(約370年前の)明の時代から中国の領土だったと説明するが、ドゥテルテ大統領は、この歴史はフィリピンにとって大昔のことであり、よく知らない、と引き下がらなかった。
すると、習主席は「私たちは友であり、良好な関係を保ちたい。しかし、フィリピンが強硬に動くなら、中国は軍事行動を取らざるを得ない」と声を荒げたという。
両首脳の会話はこうして火花を散らしたが、フィリピンの同声明文では「南シナ海領有権紛争は複雑な問題であり、双方は最終的に平和な方法で対処することで一致した」と、論争には触れなかった。
中国が独自に設定した、南シナ海のほぼ全域を自国海域とする境界線「九段線」について、フィリピンは線内の一部領有権を主張し、2013年オランダ・ハーグの常設仲裁裁判所に仲裁を求めた。16年7月に出された判決は、九段線は「国際法上の根拠はない」と断じたが、中国は「判決を認めないし、受け入れられない」と、はねのけた。
この領有権問題に関して、対話による解決を強調し、中国との対立を避けていたドゥテルテ大統領だったが、今年4月に態度を一変させた。域内の自国領とするスプラトリー諸島(南沙諸島)を「全面的に占領」するよう軍に命じたという。アベリア大統領報道官が慌てて「わが国が実効支配している島しょ・岩礁になどにある施設を改善せよということだ」とフォローする一幕があった。
南シナ海は、香港、中国、台湾、フィリピン、ブルネイ、マレーシア、ベトナム、インドネシアに囲まれた海域のこと。石油や天然ガスの埋蔵が豊富。大きな島は中国領土の海南島程度であるが、中小の島嶼は多く、南海諸島(南沙諸島、中沙諸島、西沙諸島、東沙諸島)、南ナトゥナ諸島、アナンバス諸島があり、各国がそれぞれ一部の領有権を主張し、たびたび摩擦が生じている。
(翻訳編集・叶清)