大気汚染

中国からの一酸化炭素 日本にも流入=NASA

中国の大気汚染が悪化している。その汚染の広がりは本土だけでなく、海を越え、台湾、韓国、日本にも届いている。NASAの地球観測システム「GEOS-5」の分析で一酸化炭素濃度の流れを可視化したデータによりわかった。

ウェブサイト「アース・ヌルスクール(earth nullschool)」では同システムを利用して、世界中の天気、風、海流、大気汚染をライブ映像を見ることができる。

一酸化炭素の濃度をみると、中国本土はチベット自治区と内モンゴルを除いたほぼ全地域で、500ppb以上の数値が観測されている。世界の平均濃度90ppb。2017年5月30日6時の時点でも、中国山東省済寧市、開封市、カ沢市あたりでは1700~1900ppb。データで、周辺は北、南、東からの風の流れが滞留する地区になっていることがわかる。

2017年1月~3月の記録を動画で確認でき、一酸化炭素が風に乗り中国本土から台湾、韓国、日本にも流入していることがわかる。

一酸化炭素は、主として物の不完全燃焼で発生する、無臭・無色の気体。おもに自動車や工場の排気ガス、また大量の石炭を燃焼させる石炭火力発電所が原因と考えられている。

高濃度で吸い込むと中毒死することで知られる一酸化炭素だが、日本と韓国の科学者が「大気汚染学会誌」に発表した研究によると、頭痛、めまい、精神機能の低下といった慢性中毒症状を起こすことがある。また、心臓と肺に有害な大気汚染物質の一つであることが報告されている。

中国本土からの黄砂被害 今年5月に日本で広範囲に

中国本土からの埃や塵など汚染物質をふくんだ黄砂が、日本、韓国、台湾など近隣諸国へ飛来し、数値を観測している。4月、韓国ソウルでは数日間、黄砂に包まれ、視界不良となった。韓国当局は中国から飛来したものだとしている。

5月はじめ、今年、日本の気象庁は北日本から西日本の広範囲に、中国からの砂嵐を観察した。見通しが悪くなるため、交通機関などに影響が出る恐れがあるとして注意を呼びかけていた。

最近、環境問題を注視する韓国の専門家や著名人90人は、中国は韓国の大気汚染をもたらしており、環境管理を怠っているとして、中国政府と韓国政府を提訴した。一部のアナリストは、勝訴の確率は高くはないものの、中国起因の大気汚染問題に国際的な関心を寄せることができ、大気の状況を改善させるための働きかけになるとしている。

(編集・甲斐 天海)

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