金正恩氏は12月3日、中朝国境に接する慈江道の鴨緑江タイヤ工場を視察(AFP/Getty Images)
緊迫の朝鮮半島

金正恩氏、中朝国境の退避ルートを確認か=韓国報道

米朝および朝鮮半島の緊張が高まる中、金正恩・朝鮮労働党委員長の動きが注目されている。韓国メディアは最近、中国と北朝鮮の国境付近を訪れた金氏は、中国への秘密ルートを確認したのではないかと情報筋の話として報じた。

北朝鮮の国営中央通信(KNCA)は12月3日、金正恩氏が、中朝国境に接する慈江道の鴨緑江タイヤ工場を視察し、現地指導したと報道。金氏は、大陸間弾道ミサイル「火星15」を搭載した輸送車に使用されたタイヤを製造したとして、同工場労働者に謝意を述べたという。

3日後の6日、金氏は北部の国境沿いの街に再び姿を見せた。両江道三池淵郡にあるジャガイモの澱粉を製造する新工場を訪れた。KNCA提供の写真は、ジャガイモがぎっしり詰まった工場内部の様子を背景に満面の笑みを浮かべる金氏という構図だ。

金正恩氏は12月6日、中朝国境に接する両江道三池淵郡にあるジャガイモ澱粉を製造する新工場を視察(AFP/Getty Images)

韓国メディア・朝鮮日報は、金氏はこれまで、米国の爆撃機が朝鮮半島に向けて出撃すれば敏感に反応し、活動の公開を控えていたという。同紙が伝える高麗大学のナム・ソンウク教授の話では、「故・金正日総書記と金正恩氏はいずれも米軍の最新ステルス機が朝鮮半島上空に現れた時は地下のバンカーに隠れていた」という。

また、同紙が報じた北朝鮮の内部事情に詳しい消息筋は、金氏が今回訪れた2地方には「中国につながる待避路があり、また山奥には地下トンネルもあるため、奇襲攻撃などに備えやすいのだろう」と推測を述べた。

米国と韓国は「史上最大規模」の合同軍事演習を12月4日から8日まで行った。米軍広報紙よると、訓練には両国から約1万2000人が参加し、F22、F35、B1Bなどのステルス戦闘機を含む230機以上が加わった。米韓訓練期間中にも係わらず金氏が6日に現地視察を行ったのは、中国への退避路を意識した「安堵感」からかもしれない。

北朝鮮は11月29日、長距離弾道ミサイル「火星15」を発射。自衛隊の河野克俊統合幕僚長は、北朝鮮が公開した写真や声明、飛行高度などから総合的に判断して「脅威度は上がった」との見方を示した。

東京新聞は12月6日、北朝鮮は新型の潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)「北極星3」試作機の開発をすでに完了し、発射実験が近く行われる見通しと報道。同国軍需工業部門に近い情報筋の話として伝えた。SLBMは、発射の兆候を察知するのが困難とされ、北朝鮮の脅威は高まることになる。

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海上自衛隊は12月10日、日米韓の弾道ミサイル情報共有訓練を行うと発表した。「北朝鮮による弾道ミサイル発射と核実験について、国の安全保障環境が厳しさを増すなか」訓練を実施して3国の関係を強化すると、北朝鮮を名指しした。韓国の国軍合同参謀本部も11日、周辺海域でイージス艦による弾道ミサイルの探知・追跡訓練を実施すると発表した。

(翻訳編集・佐渡道世)

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