中国当局は大使館を通じて、デンマークの王立劇場など複数の劇場ホールに対して、中国古典をテーマとする芸術団に劇場使用許可を出さないよう要求していたことがわかった。現地ラジオ局が王立劇場関係者の話として報じた。
年次世界ツアー中の「神韻芸術団」は、2018年ツアーでおよそ160の世界各都市をめぐる予定。公演範囲は世界最大規模といわれる、専用オーケストラ団付きの舞台芸術チームだ。デンマークのラジオ局Radio24syvが伝えた王立劇場関係者の話によると、デンマーク公演のために、神韻側から劇場使用の打診があったが、劇場運営側は「品質の問題」を理由に断った。
しかし、神韻への劇場使用却下の裏には、中国大使館の圧力があったという。2017年8月、劇場関係者2人は、在デンマーク中国大使館の芸術担当官と面会した。2月に中国の春節(旧正月)を祝う行事のために劇場を借りたいとの希望と同時に「もし神韻芸術団と交渉を続けるならば、私たち(中国大使館側)はもう会わない」と言われ、さらに「神韻には施設を貸し出さないように」と要求されたという。
現地日刊紙ベルリンゲスケ(Berlingske)今年2月の報道によると、王立劇場代表モーテン・ヘッセルダル(Morten Hesseldahl)氏および文化大臣メッテ・ボック(Mette Bock)氏は、中国側の圧力があったとの報道内容を否定している。
神韻芸術団は「中国伝統文化の復興」をテーマに、世界巡回公演を行う舞踊と音楽の芸術団。2006年にニューヨークで発足して以後、米国ニューヨークの権威あるリンカーンセンター、ワシントンDCのケネディセンターを始め、英国、ドイツ、フランス、カナダ、日本や台湾など各主要都市で公演している。
公式サイトによると舞台演目は、歴代皇帝にまつわる典故、中国神話、民族舞踊、現代中国における法輪功の精神修養などをテーマにしている。
中国共産党政権の主導なしで、海外における中華思想を伝える神韻芸術団に、当局は激しく反対姿勢を示してきた。現在、中国本土では公演が許可されていない。2010年には香港公演が予定されていたが、団員の入港ビザが下りず、公演はキャンセルとなった。
大紀元の調べでは、中国当局が現地大使館を通じて、神韻の海外公演をさせないためにさまざまな手法を講じている。例えば現地スポンサー企業、議員、行政に対して、神韻について悪印象を与える書簡やメールを出す、公演会場の外で反対デモを繰り広げるなど。
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米主要紙ニューヨーク・タイムズ、ウォール・ストリート・ジャーナルなどに折込広告として入れられている中国官製英字紙チャイナ・デイリーは、2017年2月、神韻芸術団について誹謗中傷する記事を掲載した。人権弁護士のテリー・マーシュ(Terri E. Marsh)氏は、ワシントン・ポストへの寄稿文で「この記事を読めば観客が神韻から足が遠のくとでも、本当に思っているのだろうか」「こんなヘイトスピーチが米国紙に挿入されてよいものだろうか」と厳しく批判した。
デンマークでは少なくとも2008年に中国当局から、神韻芸術団の公演停止を求める声明が、現地当局に送付されたことが現地のテレビ局の報道で明らかになっている。
王立劇場代表、一流劇場でチケット完売公演が「レベル満たしていない」と回答
現地紙ベルリンゲスケ紙によると、王立劇場代表のヘッセルダル氏は、圧力があったことは報道されるまで知らず「劇場は政治闘争の場であってはならない。また(劇場使用を却下した)神韻は、その業績から公演レベルを満たしていない」と同紙に述べた。
いっぽう、国会議員ソレン・エスペーション氏は、世界の著名劇場を満席にしていると報じられている神韻の公演が、王立劇場の舞台を踏むレベルに達していないという劇場代表の話は、説得力に欠けると指摘している。
劇場代表の神韻についての認識は、代表が2017年9月に文化省に宛てたメールと、新聞での回答は、食い違っている。
同紙によると、代表は「神韻は舞台公演以上のムーブメントとなっており、王立劇場の名は、政治騒動を招くような宣伝になってしまう」と劇場代表は利用却下理由についてメールしている。
デンマーク公民大学教員で弁護士のベンテ・ヘゲルンド(Bente Hegelund)氏は「劇場代表は神韻のムーブメントが気に入らず、まるで迷惑しているかのようだ。しかし、これが芸術公演への評価基準において、強調されるべき問題ではないはず」と批判した。
ルーン・ルンド野党議員は文化省に対して、大使館の圧力疑惑を調査するよう求めている。「デンマークにおいて完全に合法的な事柄に、中国が干渉している。デンマークでは言論も舞台も自由でなければならない。市民の権限を侵し、圧力をかけるようなことをするのであれば、中国大使館がここに置かれるべきではない」と強く批判した。
(編集・佐渡道世)
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