イタリア「一帯一路」覚書検討「植民地化なら断じて応じない」内外から懸念の声
中国が主導する広域経済圏構想「一帯一路」への参加について、イタリア政権内や同盟国に懸念が広がっている。イタリア副首相は11日、「海外政府による植民地化構想なら応じる用意はない」と警告している。イタリアが所有する航海ルートで欧州と東アフリカ、東南アジアを結ぶ海上経済回廊は共産党政権に狙われている。
イタリアの一帯一路への参加意向は、3月6日、経済開発省ミシェル・ゲラシ次官補が英フィナンシャル・タイムズとのインタビューで明らかにした。
3月22日から3日間、中国の習近平国家主席はイタリアを訪問する。ゲラシ次官補は、一帯一路参加交渉は進行中であり、ジュゼッペ・コンテ首相は滞在中の習主席と覚書に署名する可能性もあると述べた。
2013年に発表された中国共産党政権主導の巨大経済構想「一帯一路」は、東南アジア、アフリカ、欧州、ラテンアメリカのインフラ建設を展開し、陸上および海上貿易ネットワークを構築するもの。中国が投じる資金は100兆円と試算されている。
鉄道や港湾を含むイタリアの交通ネットワークは、南欧と東アフリカ、東南アジアの港を結び、最終的には中国に繋がる。一帯一路の海上経済回廊にとって要衝となる。
しかし、中国共産党政権のこの広域構想は、途上国に多額の融資契約を結ばせ、中国企業が建設・運営を行うため、「債務トラップ外交」「植民地化計画」などと批判されてきた。
このため、米国当局はすぐさま、イタリアの動きに懸念を表明した。3月9日、米国の国家安全保障会議(NSC)はSNSで次のように述べた。「 一帯一路を支持することは、中国の略奪的なやり方に正当性をもたらすもの。イタリア国民の利益にならないだろう」。NSCギャレット・マーキス報道官も同日に、ほぼ同じ内容のコメントを出した。
Italy is a major global economy and a great investment destination. Endorsing BRI lends legitimacy to China’s predatory approach to investment and will bring no benefits to the Italian people.
— NSC (@WHNSC) March 9, 2019
もしコンテ首相が署名すれば、G7ではイタリアは一帯一路に加わる初めての国となる。日本や米国、カナダ、フランス、ドイツ、イギリスの中央政府は参加を表明していない。
イタリア政府内でも、中国の一帯一路に反対する意見がある。イタリアのサルビーニ副首相は12日、記者団に対して「もし海外企業によるイタリアの植民地化という話なら、断じて応じる用意はない」と警告した。
グリエルモ・ピッチ外務次官補は、NSCのツイートを転載し「私は懸念を共有する。私たちの同盟国を喜ばせるためではなく、より綿密な調査が必要だ」と慎重な姿勢を示した。
イタリアの経済界からも、中国との覚書署名を懸念する声が上がっている。輸送組合会長ルイージ・メルロ氏は、「私たちの取引増加と、増幅する中国の覇権的地位との間で、みなが認識できていないリスクがある」と現地日刊紙イル・ジオナーレの取材に述べた。
メルロ氏は、港湾や高速道路などインフラ計画の主導権を中国が握れば「指揮管理権を海外政府に明け渡すことになる」と付け加えた。
欧州メディアEURACTIVは、匿名の情報筋の話として、国際交渉の役割を担うイタリア外務省を飛び越えて、なぜ経済開発省が覚書署名の意向を突然発表したのかに驚いていると述べた。
(文フランク・ファン/翻訳編集・佐渡道世)