米ニューヨークの国連本部で1月14日、2020年世界人権報告書を発表した(GettyImage)

中国は世界の広い地域で監視拡大=国際人権団体が報告書

米ニューヨークを拠点とする人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)の新しい報告書によると、 中国政府は世界の広い地域で官製の監視システムを構築しており、世界中の人権に対する脅威だと指摘した。

HRWは1月14日、ニューヨークの国連本部で「2020年世界人権報告書」の発表記者会見を開いた。代表ケネス・ロス(Kenneth Roth)氏 は「人々の未来を守るために、中国共産党政権の国際人権システムに対する攻撃に抵抗して、協力する必要がある」と述べた。

HRWによると、国際的な人権監督メカニズムを弱体化させようとする中国の明白な標的は、国連であるという。「中国政府は 、国際的なフォーラムで自国のイメージを守るために武器を振り回すことをためらわない」 「国連は重要なターゲットだ」

報告書は具体的に、アントニオ・グテーレス(Antonio Guterres)国連事務総長が、新疆ウイグル自治区における大量拘束と再教育キャンプの終了を不本意ながら公に要求したことは批判しないが、中国の広域経済圏構想・一帯一路によるインフラ支援を褒め称えたことを批判した。

国連人権理事会において、中国は、特定の国を批判するほぼすべての人権政策に反対している。例えば、ミャンマー、シリア、イラン、フィリピン、ブルンジ、ベネズエラ、ニカラグア、イエメン、エリトリア、ベラルーシの人権侵害を非難する決議に、中国代表団は反対票を投じている。

HRWの報告は「中国は、経済発展が人権の尊重より先行するべきだと主張することで、国際人権の枠組みをゆがめようとしている」と指摘した。また、中国政府は国際的な場面で、人権が政府の担うべき法的義務よりはるかに弱いものとして再定義しようとしていると付け加えた。

「中国の人権記録が、2018年 と2019年に人権理事会で定期的に見直し(レビュー)されるようになったとき 、中国代表団は、批判的な国の代表団を脅迫し、同調する国には称賛を送るよう促した」と報告書は述べた。

脅威をもたらす中国の外交官

HRWの報告によると、中国の外交官も国連で虚偽の情報を提示し、さらに「他国の代表団が新疆の人権侵害についてのパネルディスカッションに参加するのを妨害したり、新疆のグループが発言するのを阻止し、脅迫した」という。

中国共産党の一帯一路の取引で「受益」する国では、権威主義が悪化し民主主義が後退することが多いという。

報告は「一帯一路は人権と環境基準をほとんど無視している」とした。「被害を受けた国あるいは地域の人々からの情報は、たとえあったとしても、ほとんど伝えられていない。腐敗した、裏取引で成立しているものがある」

こうした権威主義が強まった一帯一路の関係国は、しばしば、中国の反人権的姿勢を支持し、中国国内の弾圧には沈黙し、国際機関の役割を弱体化させているという。

ロス代表は当初、この報告書を香港で発表する予定だったが、香港で入境を拒否された。理由は、「暴力と分離主義を扇動する」ためだという。

2019年11月末、米国トランプ政権は香港人権・民主主義法を成立させた。これに報復する形で、中国外務省は12月2日、米国拠点の複数の団体に「制裁」を科すと発表した。華春瑩報道官によると、HRWほかフリーダム・ハウス、全米民主主義基金(NED)が含まれる。制裁の詳細は明かされていない。

ロス氏はコメントのなかで、中国共産党政権はまた、人々の抑圧システムのためにAI(人工知能)など先端技術を駆使しているとした。生体やDNAサンプルの強制収集などを通じてビッグデータを構築し、大規模に人々のプライバシーに侵入して、人々を制御しようとしている。

「その狙いは異論のない社会を構築することだ」とロス氏は述べた。

HRWの報告はまた、中国政府は中国と強い繋がりを持つ企業に、何度も政治的な要求を押し付けていると指摘した。

外務省の耿爽報道官は、HRWの報告は読んでいないが、中国人民は「人権の最終決定権を持ち、今の状態は史上最も良い」と言い張った。

(翻訳編集・佐渡道世)

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