春秋時代に剡子(ぜんし)という人がいた。彼の年老いた両親は目を患っており、治すには鹿の乳を飲まなければならなかった。そこで、剡子は鹿の皮を身にまとって深山に入り、鹿の群れに紛れ込んで鹿の乳を搾った。
ある日、剡子が乳を搾っていると、狩人が本物の鹿と間違えて自分を射ようとしていた。幸いに剡子はそれに気が付き、あわてて鹿の皮を脱いで姿を現した。そして、事の経緯を狩人に話すと、狩人は剡子の孝行ぶりにいたく感じ入り、鹿の乳を贈ってくれた上、ふもとまでわざわざ連れて下りてくれた。
(編集・望月 凛)
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