「快楽中枢」の恐ろしさ
豊かな経済は快適な生活を我々にもたらす。しかし、物質的な豊かさは、人間の欲望を満足させると同時に、常に脳内の「快楽中枢」を刺激して、さまざまな悪い習慣を身につけてしまうことが少なくない。これこそが「快楽中枢」の本当の怖さである。
美食に慣れた人は、食べることの管理ができなくなり、もう食べてはいけないと思いながら、美味しいケーキや、アイスクリーム、チョコレートなどを、次々に口に運んでしまい、徐々に体重が増えて、高血圧、心臓病、糖尿病が次々にやってくる。その他に、買い物症候群、ネット中毒症、へビースモーカー、アルコール中毒症、テレビ中毒症、漫画中毒症などのさまざまな悪い習慣は、この「快楽中枢」と関わりがある。
「快楽中枢」の存在は新しい発見ではない。50年前に科学者たちはすでにこの問題を研究し始めた。1954年、米国カリフォルニア州理工学院の二人の若い生物学者が、ネズミの脳内に「快楽中枢」を発見した。視床下部にあるこの中枢に電極をつないで、外部のスイッチを小さなテコにつなぎ、そのテコを押さえれば、電流が「快楽中枢」を刺激するようにセットする。驚くことに、ネズミはまもなく自らテコを押さえて電流を流し自分の「快楽中枢」を刺激することを覚えた。しかも、ネズミは1時間に8000回もひっきりなしにテコを押さえ、15~20時間の間に、疲れ果てて寝てしまうまで繰り返して押さえ続けた。再び目覚めると、また同じ行動を繰り返した。生きることが動物の本能なのに、なぜネズミは命知らずにテコを繰り返し押さえ続けたのだろうか。原因は「快楽中枢」の問題である。
科学者の研究によれば、人類の「快楽中枢」は主に生存や生殖などの本能的な行動の調節役を担当している。食欲、色欲などは、すべて「快楽中枢」による情動である。麻薬常用者に対する研究によれば、麻薬をしばらく使用すると、病理的「快楽中枢」が形成されて、そこから多量にカテコールアミン類の神経伝達物質が放出され、生理的「快楽中枢」に干渉して、麻薬に対する強烈な渇望と依存性が生じる。
こうしてみれば、人間は適切に「快楽中枢」の働きを管理し抑制しなければならない。さもなければ、人間は「快楽中枢」の奴隷になりかねない。古人の言葉で言えば、「満足を知るものは常に幸せでいられる」。本当の快楽は、「快楽中枢」に対する有効な管理によってもたらされるのである。