「またもや中国の千人計画だ」助成金410万ドルを違法使用 研究者を起訴=米司法省
米司法省はこのほど、オハイオ州の中国出身の研究者を、国立衛生研究所(NIH)から助成金を受けながら、中国の海外ハイレベル人材招致プログラム「千人計画」に加わっていたことを公表しなかったとして、助成金詐欺の罪で刑事起訴した。
米司法省が7月9日に発表した声明によると、リウマチ学と免疫学専門の鄭頌國(57)被告は410万ドルの研究費取得詐欺のほか、中国国内の研究機関と雇用関係を維持していたとして、虚偽申告の罪に問われている。
米捜査当局は5月22日、アラスカ州のアンカレッジ国際空港で中国行きの航空便を待っている鄭被告を逮捕した。
訴状によると、鄭被告は2013年から、中国政府の千人計画に参加している。同被告は、所属する米大学やNIHに対して、利益相反や外国の人材プログラムのメンバーであることを報告しなかった。
米連邦捜査局(FBI)情報部アラン・ E・コーラー副部長は「またもや、中国の千人計画のメンバーである米国大学の教授が、中国の大学との関係や中国政府からの資金の受領を故意に隠蔽した事件が起きた」とコメントしている。さらに、助成金詐欺の容疑で「米国の納税者の資金が悪用された」と指摘。「中国など外国の利益のために違法行為をしたものは、訴追から免れられない」と強調した。
オハイオ州南部地区のデビッド・M・デビラーズ検事によれば、鄭被告の勤め先である大学は、同被告が助成金に関する規則を守っているかどうかの調査を進めている最中、同被告が国外逃亡の準備をしているとの通報を受けたという。
鄭被告は空港での逮捕時、大きなトランク3個、小さなスーツケース1個、ブリーフケース、ノートパソコン2台、携帯電話3台、USBドライブ数台、銀の延べ棒数本、家族の期限切れの中国パスポート、中国の不動産の証書などを持っていた。
訴状によれば、鄭被告は、公的資金受領プログラムの関連詐欺や贈収賄の罪で告発され、最高で懲役10年の刑が下る可能性がある。 担当するエリザベス・プレストン・ディーバース判事は同被告が国外逃亡する恐れがあるとして、保釈金なしの拘束を命じた。
5月、FBIは分子医学を研究するクリーブランド・クリニックの中国系研究者と、米航空宇宙局(NASA)研究員でアーカンソー大学の科学者を逮捕し、起訴した。千人計画への参加を隠しながら、同時に、米国公的資金である助成金数百万ドルを受け取っていた。
FBIシンシナティのクリス・ホフマン特別捜査官は、「研究者が政府を騙し、中国の利益のために助成金を悪用した場合、真の被害者は米国の納税者である」と指摘した。「米国で開発される最先端技術は、外国の敵から慎重に保護されなければならない」とコメントしている。
7月7日、FBIのクリストファー・レイ長官はシンクタンクでの演説で、中国の情報窃盗工作は米国にとって長期的な脅威だと述べた。「中国はサイバー侵入から内部関係者の腐敗に至るまで、さまざまな高度な手法を使用する」「諜報要員のみならず国営・民間企業の社員、大学院生や研究者、その他さまざまな工作員を通じて、米国の先端技術を盗むために広範囲に渡って行動している」とレイ氏は警鐘を鳴らした。
(翻訳編集・佐渡道世)