専門家100人、EU中国投資協定の撤回を要求 人権問題を懸念=独紙
世界中の100人以上の著名な中国の専門家、研究者、人権活動家はEU議会に対して、昨年12月30日に原則合意されたEU中国投資包括協定(CAI)の即時撤回と、中国の人権状況に「実質的かつ検証可能な」進展があるまで交渉を保留するよう求めた。
独紙シュピーゲルは1月25日、事前に提供された公開書簡を報道した。それによると、「民族浄化、強制労働など重大な人権侵害の証拠があるにもかかわらず、欧州の指導者たちが署名した協定には、人道に対する罪や奴隷制度の廃止を約束することを中国政府に要求する内容は含まれていなかった」と書かれている。
今回の協定で、中国側は欧州企業の中国市場へのアクセスを改善し、政府補助金に関する情報の透明性を高め、欧州企業の知的財産の中国本土への強制移転といった差別的習慣を撤廃すると説明している。
同協定ではまた、中国共産党が国連の国際労働機関の強制労働条約について「批准に向けて取り組む」としている。EU側の広報担当者は、中国のこの動きは今回が初めてだと評価した。強制労働条約は、多国間の労働基準に違反した国に責任を負わせるものだ。
同協定の発効は欧州議会の批准が必要で、2022年初めまでに施行するとみられる。
しかし、今回公開書簡に署名した専門家らは、この取引は「中国共産党の性質について十分認識していないことを反映している」とし、「欧州の既存の中国への戦略的依存を深め、欧州の核心的価値観に反する」としている。原則合意によれば、ヨーロッパの投資家が実際に中国で公正な扱いを受けるかどうかは保証されていない。
書簡は「中国が投資と貿易の問題で約束を守ると考えるのは妄想だ」と書いている。その事例として、香港の民主化運動の弾圧、イスラム教徒のウイグル人少数民族の強制収容、オーストラリアに課した報復的制裁、台湾への軍事圧力などを挙げている。
書簡の発起人の一人であり、ノッティンガム大学アジア研究所の上級研究員であるアンドレアス・フルダ(Andreas Fulda)氏は、「欧州委員会は、政治と経済を切り離すことが可能であるかのように行動しているが、中国の場合、それは不可能だ」と述べている。
独マーシャル基金のアジア・プログラム上級研究員で、対中国政策列国議会連盟(IPAC)のアドバイザーでもある中国専門家、マーレイケ・オールバーグ(Mareike Ohlberg)氏は、「条約を結ぶ相手として中国の信頼性への理解が不足している」とEUの担当者を非難した。
交渉7年に及ぶCAIの合意は、米国の政権移行時期に行われ、バイデン政権の対中姿勢が不鮮明な中、合意に至った。中国官製メディアによれば、習近平主席は、中国とEUを「世界の二大パワー、二大市場、二大文明」と位置付けた。また、CAIを通して、中共主導の経済圏構想「一帯一路」など、大陸接続戦略の連携強化を主張した。
トランプ前政権の高官は、CAIは大西洋横断協力の妨げとなる動きだと批判した。去年12月30日、米大統領副補佐官(当時)のマット・ポッテンジャー(Matt Pottinger)氏は、IPAC欧州議会代表に向けたメッセージとして「新疆ウイグル自治区に数十万平方メートルの強制労働の工場を建設する中、北京の『労働者の権利を尊重しよう』という主張に、私たちが騙されることはない」「EU委員会は残酷な(中国の)人権侵害に目をつむり、北京との提携を急いだ」と述べた。
EU委員会の報道官は台湾日報に対して、EU中国投資包括協定に加盟する27カ国は、懸念されている中国の強制労働を排除するために「あらゆる手段を使用する」とし、不十分な場合はEUグローバル人権制裁法の発動もあると述べた。同法は、制裁対象者のEU加盟国への渡航を禁止し、EU内の資産凍結の措置を含む。
(翻訳編集・佐渡道世)