EU、中国との投資協定批准手続き停止 中国企業を念頭の規制案発表
欧州連合(EU)執行機関である欧州委員会のドムブロフスキス委員(通商担当)は4日、昨年末に中国と合意した包括的投資協定(CAI)について、欧州議会で承認手続きを停止したことを明らかにした。中国の人権問題をめぐっての関係悪化が理由だ。また、EUは中国政府から補助金など優遇措置を受けている中国企業を念頭に、新たな規制案を発表した。
ドムブロフスキス氏は同日、仏AFP通信のインタビューに対して、「われわれは現在、ある意味で、欧州委員会側からの政治的な働きかけを停止している」と述べた。また、「EUの対中制裁と、欧州議会議員らに対する中国側の対抗制裁により、現状では、協定の批准に向けた環境が整っていないことは明らかだ」と同氏は示した。
報道によると、同協定の法的見直しと翻訳は引き続き行われている。
EUは3月、新疆ウイグル自治区のウイグル人住民の人権を侵害したとして、中国当局者4人に制裁を科した。これを受けて、中国当局は即座に対抗措置を講じ、欧州議会の議員や学者、シンクタンクを制裁した。さらに、新疆問題をめぐって、中国当局は国内で、スウェーデン衣料品大手H&Mを含む欧米企業の不買運動を起こした。
昨年12月30日、中国とEUは約7年間の交渉を経て、CAIを大筋合意した。同協定では、欧州企業の中国市場へのアクセスが改善されたほか、中国当局は、国有企業への補助金の透明性を高め、技術の強制移転などを禁止し、欧州企業を中国国内でより公平に扱うことを約束した。中国側が大きく譲歩したと見受けられる。
米メディア「ポリティコ(Politico)」EU版4月26日付は、EU上層部の内部報告を引用して、EUは中国当局に対しより強硬な姿勢に転じたと報じた。内部報告は、中国当局がデジタルや農産品市場、産業補助金の抑制などにおいて、EUに約束した経済改革政策について「ほとんど進展していない」と批判した。また報告は、中国当局は過去2年間「より独裁の路線に進んだ」とし、中国との経済関係に悲観的な見方を示した。
「ポリティコ」によると、新疆問題をめぐって中国側が欧州議会の一部の議員に制裁を科したため、多くの議員は「同僚が制裁を受けているため、協定を絶対に承認しない」と表明した。
いっぽう、EUは5日、欧州に進出する外国の国営企業を取り締まる新たな規制案を発表した。
米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)によれば、規制案は、EUの独占禁止法当局に対して、外国企業が同国政府の補助金を受けていると判断された場合、欧州で買収や政府機関の入札を阻止する新しい権限を与える。これらの外国企業がEU側の要求に従わない場合、厳しい処分に直面する。規制案が欧州議会で批准されれば、中国の大手企業がこの新規制案の主要対象になるとみられる。
WSJは、同規制案は、EUの対中姿勢転換を示す新たな事例であるとの見方を示した。
(翻訳編集・張哲)