(Powerhouse Museum/Creative Commons)
≪医山夜話≫ (13)

優秀な女医が残した人生の遺憾

私の友人に、ケイシーという女医がいました。彼女が勤める病院は私の診療所の近くだったので、私たちはよく互いに患者さんを紹介していました。有能で美しいケイシーは私と同年齢でしたが、不幸なことに、彼女は不治の病に冒されてしまいました。私は7年間、彼女が病気を患ってから亡くなるまでの全過程を見守りました。彼女のことを思い出すと、悲しみで胸が一杯になります。

 ある日、彼女は患者として私の診療所を訪れました。問診票の空白のところに、「末期がん、余命1~2ヶ月。神さまも私自身もあきらめています。ここに来たのは一時的な痛み止めの手段を得るためです」と書きました。

 当時、彼女はいつもかばんを背負っていました。かばんの中にはモルヒネ注射の容器が入っており、容器に繋がれたチューブの一端が彼女の身体の中に挿し込まれています。

▶ 続きを読む
関連記事
進行が速く「がんの王」とも呼ばれる小細胞肺がん。それでも転移を繰り返しながら長期生存した例があります。免疫療法や最新検査ctDNAの可能性、見逃せない症状と予防のポイントを医師が解説します。
「1日1万歩は無理…」と感じている人へ。最新研究が示すのは、七千歩でもがんや認知症リスクが大幅低下するという現実的な健康習慣。忙しい日本人の生活に合う、続けやすさと効果の理由を分かりやすく解説します。
がん細胞は糖だけでなく、脂肪やアミノ酸など複数の燃料を使い生存します。研究者は、この代謝の柔軟性を断つ新たな治療戦略に注目しています。
がんと診断された人の生存率が、過去数十年で大きく改善している。最新の報告書によると、現在ではがん患者の10人中7人が診断から5年以上生存している。一方で、発症数の増加や医療格差といった課題も浮き彫りになっている。
口内の微生物が膵臓がんリスクを左右する――大規模研究で明らかに。唾液検査の可能性や歯周病との意外な関係を解説し、今日からできる口腔ケアと予防のヒントまで示す、今知っておきたい注目記事。