弓術(ここでは弓道やアーチェリーの総称)は狩猟や戦争時に使える武術ですが、同時に深い文化をも継承しています。また、身を修め人格を磨く活動として、何千年も受け継がれてきました。
現在、オリンピックの競技でもアーチェリーの種目があります。ちなみに、オリンピックの女子アーチェリー競技の中で、最も多くのメダルを獲得してきたのは、韓国だと言われています。1984年から、韓国の女子アーチェリーチームは個人戦と団体戦で多くの金メダルを獲得しました。
では、なぜ韓国人は弓術が得意なのでしょうか?それは、韓国では弓術が普及しているからです。以前、台湾で韓国人の運動レベルを調査したことがあります。韓国では、小学校から大学まで、弓術は必修科目です。社会でも弓が体験できる公共施設が多く設けられているので、韓国人は幼いころから弓に親しんでいるのです。
では、なぜ弓術はこれほど韓国で盛んなのでしょうか。ご存じのように、昔、韓国と朝鮮は同じ国でした。第二次世界大戦後の朝鮮戦争で南北に分かれたのです。それ以前の朝鮮半島は中国文化の影響を受け、歴史書も漢字で書かれていました。弓術も中国から朝鮮半島に伝わったのです。
明王朝の頃、弓術は非常に重んじられ、各地で「観徳亭」が建てられました。「観徳」は『礼記』に由来し、「矢を射ることより、徳を磨け」(「射者、所以観盛德也」)と言われて、つまり、「矢を射る者の徳行が分かる」という意味です。「観徳亭」には、矢を射ることで心身を整え、高尚な文武の精神を養ってもらいたいという願いが込められています。
現在、中国では、観徳亭はもうなくなりましたが、しかし、韓国済州市中心部にまだ観徳亭が残されています。有名な観光名所であると同時に、済州島最古の木造建築物でもあります。この観徳亭は1448年に兵士の練武場として建てられ、「射以観徳」の扁額も掛けられています。
『孟子』には、「仁徳ある者の行いは弓術の競技のようである。射手はまず自分の心身を整え、それから的をめがけて矢を放つ。たとえ的に当たらなくても、自分に勝った者を妬まず、自らを反省する」(「仁者如射。射者正己而後発,発而不中,不怨勝己者,反求諸己而已矣」)とあります。
弓術の師範はこのように強調しました。「弓術で最も重要なことは、冷静を保ち、外界に妨害されないことだ」
様々な情報が飛び交う現代社会で、我々は非常に外界に気を取られやすいです。多くの人は集中力が欠けたり、集中できなくなったりなどの問題を抱えているでしょう。静かな場所を探す、電子機器の音を切るなど、外界から問題を解決するより、内側から、つまり、周りに影響されないような「強固な」集中力を養うほうがより早く問題を解決できるのではないでしょうか。
5、6年弓術を習った人によると、「的を外した時、真っ先に自分の原因を探さなければならない。これが習慣になると、普段生活の中でも、トラブルや物事が思い通りにならない時、まず自分のどこがいけないのかを探すようになる。そうすると、知らないうちに煩悩が少しずつ消えていくようになるのだ」といいます。
「他人に答えを求めるよりも、自分の心に問いかけて答えを見つけるほうがよっぽど簡単だ」
(翻訳編集:華山律)
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