(大紀元)

高智晟著『神とともに戦う』(19)夫人が見た高智晟(1)

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(訳者注)本項は高智晟 弁護士の妻・耿和氏の口述をもとに書かれているため、前項までの第一人称体である「私(高弁護士)」とは異なった文体になっています。

 

1985年、若く美しい女性通信兵であった耿和は、兵営で、炊事係の高智晟と出会った。高智晟の善良な人柄に耿和は心惹かれ、徐々に思いを寄せるようになり、そして最後にこの二つの命は固く結ばれたのである。結婚して15年の間、最高潮の時もどん底の時も、耿和の優しさといたわりは始終、高智晟の毅然さと勇敢さにぴったりと寄り添い、決して離れることはなかった。

今回、高智晟は当局に直言する書簡を送ったために有罪になったが、この時人々は初めて、この不屈の大弁護士の傍らにいる、この女性を目にした。そして、「私の主人と家庭に対する絶え間ない迫害に、強く抗議する」との彼女の叫びを聞いた。先日、大紀元紙の取材を受けた耿和は、妻としての独特の視点と自ら感じ取った思いから高智晟を語ってくれた。

 ただその一言のため、ずっと彼と共に歩んできた

自身と高智晟との愛を語るとき、耿和はまるで新婚の時のように幸せになる。

85年、耿和は新疆(しんきょう)カシュガルの18団に入団し通信兵となり、女性兵団に組み入れられた。16、17歳といえば、まさに育ち盛りなので、すさまじい勢いで食べる年齢だ。だから、若い彼女らはいつも物足りなさを感じ、おやつを買っていた。だが、新兵の訓練は固く閉ざされた環境で行われるため、勝手に兵営を出入りすることは許されなかった。そこで賢い女性兵士たちは皆、判を押したように「主計長殿」に目をつけた――すなわち、しばしば食料を買い出しに行く曹長、高智晟である。

耿和によれば、高智晟はとりわけ無様だったという。身長178センチで体重50キロの痩せこけた身体。いつも縫い直したラッパズボンに、ポケットが4つ付いた上着をまとい、自転車に乗っていた。後ろには女性兵のために手に入れた、麻花(マーホア、中華風かりんとう)やリンゴ、靴ひもやトイレットペーパーなどをいっぱいに詰めた袋を乗せて。

他人には面倒をかけまいと、耿和は高智晟に買出しを頼んだことはなかった。それに、彼のみすぼらしい様は心底嫌だった。けれど、連日女性兵十数名のため、嫌がることなく買出しに行き釣銭を渡す、この「主計長殿」の人柄は認めざるを得なかった。

3ヶ月の訓練を終えた耿和は、南江軍区会議ビルに配属されて電話交換手になった。この間、高智晟はたびたびやって来ては炊事の手配をした。だが、耿和を訪れることはなかった。ある時、高智晟を見かけた耿和は入り口のベランダで、彼に向かい叫んだ。「曹長、こちらにいらして下さい」

高智晟はやって来た。「なぜ、ずっと来なかったの?」との耿和の問いに、高智晟はただ一言、「だめだ。会う回数が少し増えるだけで、必然の結果が生まれてしまう」。

耿和も後で分かったことだが、新兵の女性兵にはトラブルが多く、原籍地へ送り返される例も少なくないという。だから、男兵と女兵の接触は禁じられ、多く語らうことも許されない。

「当時、おぼろげに彼の気持ちを感じ取っていました。彼も私に会いに来たいけれど、そうすれば私の政治生命や前途に影響を与えてしまう。この点、私は特に感動しました。宿営地では女性は少ないからちやほやされており、男兵にとっては女兵一人でも知り合えれば鼻が高いんです。それで、いったん顔見知りになるとしょっちゅう訪ねて来ます。なのに、主人はこれほど私のことを考えてくれて…強く心を打たれました」。

 

耿和のこの感動は、十五年たった今も色あせはしない。だからこそ今日、当時の状況を振り返った時、心は喜びで満ちあふれる。

この後、二人は電話で互いに理解を深め、知己となった。3年後、共に復員し、男はカシュガルに残り、女はウルムチへ帰った。1400キロ余りの距離が二人を隔てたが、耿和の心は高智晟のそばを離れることはなかった。

復員後の高智晟は展望が開けなかった。1ヵ月働いても100元ほどしか稼げない。しかも耿和の両親は二人のことに反対し、母はもう少しで娘を勘当するほどだった。高智晟が耿和に会いにウルムチまでやって来ても、耿和の家には入れない。外の宿泊施設に止まるしかなかった。涙を流す高智晟に、耿和もつらかった。「主人は私よりも、もっと重圧を感じていたはずです。主人の当時の格好ときたら、肌は浅黒く、やせ細っていて、今の出稼ぎ農民のようでした。精神的にも参っていた様子でした」。

二十歳前の耿和は純粋で一途だった。他人から武装部隊の部長の息子や公安局の子弟を紹介され、「もし交際すれば、ただちに豪華な食事が満喫できる部門に配属する」と約束されても、耿和は高智晟を忘れられなかった。他人から交際相手の話を振られただけで、嫌だった。3ヶ月間悩みに悩んだ末、耿和はついに決意した。「彼は良い人。たとえ農民になったとしても、私は彼について行く」。

 (続く)

 

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