(大紀元)

高智晟著『神とともに戦う』(32)孤独な者の孤独な夜⑥

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形の上では「モラルの高い都市」へと発展を遂げた街――大連。だが、この地の裁判所が作り出した罪悪は書きつくせないほど多い。

2001年、陳文福というエリートエンジニアがちょっとした病気のため、大連医科大学付属第二病院で点滴を受けたところ、その場でこん睡状態に陥った。意識を取り戻した彼の目に飛び込んできたのは、静脈用の点滴液に混じった大量の砂状物質だった。その後、病院側は彼に3日3晩救命治療を行ったが、ほどなく彼の体から、一連の致命的な病が発見されることとなる。しかもこれらの病のほとんどは、血栓による血管のつまりが招いたものであった。

病院側とこの点滴液の生産者――浙江正大青春薬業公司は、一切の賠償を拒否した。これは製品および医療業務の質が招いた悪質な事件である。だが人間性の欠けらすらない、あの裁判官たちは「これは医療事故に他ならない」と言い張った。

実は、病院と生産者すら法廷で、大量の砂状物質を含む液体を人に点滴するのは正常ではない、と認めていた。けれども汚い裏取引の結果、裁判官・裁判所および法律はその魂を失ってしまった。毎回酸素ボンベを抱え点滴を受けながら出廷する原告を前に、裁判官は一切の情けもないうえ、被害者と代理弁護士の私には反感の色がありありと出ていた。

私は法律・法理・人間性と良知に満ちた発言をしたが、逆に司法警察官の脅しが返ってきた。お金がなくて治療ができず何度も命を落としかけた原告は、早く裁判を進めるよう訴えたが、冷酷な裁判官は全く気にかけるそぶりもなかった。また原告は、ほかの人に抱えられながら、全人代や共産党委員会・政府などに援助を求めたが、どこも梨のつぶてだった。

その挙句、裁判所は2年も引き伸ばしてから、彼に敗訴の判決を下した。被害者は省の高級裁判所にも訴えたが、ここも同じ穴の狢(むじな)だ。病院と生産者が持つ力の前に、被害者は再度敗訴の憂き目にあった。

二審が開廷して審理が終わり私が法廷を出た後、裁判官は酸素ボンベと点滴をつけた被害者に対して、「君はなぜ、愚かにもあんな弁護士に依頼したのか。あんな弁護士で勝てるとでも言うのか」と意味深げな嘲笑の笑みを浮かべた。

私の依頼者は泣いて抗議をしたが、これに対し大勢が声を張り上げて笑った。これらはすべて、私が彼ら(裁判官)の人間性と良知を善意で信頼して発言した直後に起こったことである。私の屈辱と苦痛がいかほどであったか、想像に難くないはずだ。

この法廷で、私はこんな発言をした。「裁判長、被害を受けた公民に対する弁護士の援助は、一種の信頼に基づきます。すなわち事実の持つ力への信頼に基づくのです。これは法律や法理・良知、および裁判所・裁判官の法律を執行する理念への基本的な信頼です。けれどもし、皆様方にとって、法律・法理・真実・道徳および論理が何の価値すら持たなくなったら、弁護士の援助は道義的な意義しかなくなります。そして、この道義だけでは目下、被害者を救うことはできません」

この後の結果が証明するのは、私のこの発言が「馬の耳に念仏」であったことだ。この事件の被害者はいまだに、障碍のある身を引きずりながら上告を続けている。このような案件を、私は数え切れないほど経験したが、常に私に付きまとうのは無力感と苦痛であった。私は被害者・陳文福氏の苦難(私の苦難でもあるが)を無数の記者に伝えたが、これを報道しようとするメディアは一つもなかった。

 (続く)

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