(大紀元)

高智晟著『神とともに戦う』(48) 障害児の無念を晴らすために③

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その日、法廷の審理は7時間にも及んだ。昼の休廷の時、依頼人たちと一緒に食事に出ると、子供の祖母は「今日のお昼は私がごちそうしますよ。断らないでくださいね。それじゃあ、あまりにも義理人情に欠けるというものです」と言った。

私は「実は今日のお昼は、ごちそうしてほしいと思っていたんですよ。そうでなければ義理人情に欠けますからね。でも条件があります。牛肉麺(牛肉入りうどん)を一杯だけ、3元を超えては駄目ですよ」と応えた。祖母は、嬉しそうに「好、好(ハオ)」としきりにうなずいていた。

1人1杯ずつの牛肉麺のはずだったが、5元もする炒め物が2皿も余計にあることに私は気付いた。なんともやりきれない気持ちになって、思わず食堂を飛び出したが、それでは祖母を傷つけてしまうと思い、また引き返して来た。牛肉麺のどんぶりを手に取ると、店の入り口あたりに立ったまま、麺を無理やり流し込んだ。

これは演技でもなんでもない。この一家にとって10元がどれほどの価値か、私には分かっているからだ。この4~5年というもの、一家は野菜を買ったことなどない。あの界隈では誰もが知っていることだが、彼らは市場にやって来ては、くず野菜を拾っているのである。

ある野菜売りは、彼らの姿を見ると必ず野菜を手渡していた。後になって、私はこの心優しき野菜売りを訪ねて、こう伝えた。「あなたは、彼らにとって本当に役に立つ援助をして下さいましたね。しかし、あなたにできることが、この国や政府にはできないのです」

法廷審理が終わり、私は、帰りの切符代を払うという祖母の善意を謝絶してから、子供に200元を残して、丹東を去った。列車に乗ると、私の携帯電話に祖母から電話がかかってきた。祖母は声を張り上げて泣いていたが、実はこんな事情があったという。何が何でも裁判に訴えようとする固い決意の祖母を、血を分けた子供すら見限り、「こんな裁判は、子供が年寄りになるまでやったって勝てっこない」と言い放って祖母の元を去っていった。

その後、この祖母の娘、つまり障害児の叔母は、この事件の報道を新聞で知ると、すぐに母親の元に駆けつけ「まったく縁もゆかりもない高弁護士ですら新疆からはるばる応援に来てくれたのに、私はなんと親不孝なんでしょう。すみません」と、母の前にひざまずいたのだった。

祖母は電話の向こうで「高先生は神様のようなお人ですね。孫にご援助くださったばかりか、我が家の娘も、先生のおかげで戻って来てくれたんですもの」と語った。

 (続く)

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