「コロナ禍は終わった」とする企業4割にとどまる 企業の7割近くでコロナ前から働き方が変化

国内では新型コロナウイルスの第1号感染者が2020年1月15日に初めて確認されてから4年が経過した。瞬く間に新規感染者数が急増し、緊急事態宣言の発出などによる外出・営業自粛といった未曾有の事態に陥った。国民生活や企業活動は著しく制限され、とりわけ企業にとっては経営資源である「ヒト」「モノ」「カネ」に大きなダメージを受けるなど、取り巻く環境は大変厳しい状態にあった。

こうした状況下で政府が提唱した「新しい生活様式」を踏まえた職場環境が徐々に拡大、非接触の打ち合わせや在宅勤務といった働き方が普及していった。

2022年以降は、経済活動と感染対策の両輪を動かしながら、新事業への挑戦や新たな需要の獲得など日本企業の柔軟性や適応力の高さが表れた。ウクライナ情勢や原材料価格の高騰など新たな課題が発生しながらも、緩やかではあるが景気は持ち直してきている。

<調査結果>

・「コロナ禍は終わった」とする企業は40.2%にとどまった。他方、「どちらとも言えない」は27.7%、「コロナ禍は続いている」と捉える企業は31.3%だった

・新型コロナの流行前(2019年以前)と比較し、自社の働き方が多少なりとも『異なる』とした企業は66.3%。他方、3割の企業で働き方は変わらず

※アンケート期間は2024年2月9日~14日、有効回答企業数は1,266社(インターネット調査)

※調査機関:株式会社帝国データバンク

 

企業の3割以上がいまだコロナ禍は終わらず

 

新型コロナウイルス(以下「新型コロナ」)が5類へ移行し、9カ月が経過したが、自社の企業活動を行ううえで、コロナ禍は終わったと感じるか尋ねたところ、「コロナ禍は終わった」とする企業は40.2%と4割にとどまった。

他方、「どちらとも言えない」は27.7%、「コロナ禍は続いている」は31.3%となった。依然として3割を超える企業で、コロナ禍は続いていると捉えている様子がうかがえた。

企業からは、「客先への訪問禁止などはなくなり、設備投資再開の動きも活発になるなど引き合い自体は多い。事業への直接的な影響としてのコロナ禍は『終わった』と言える」(機械製造)といった声がある一方で、「周囲に感染者が出ているため、まだ終わったとは言い難い」(建設)、「観光バス事業においては、稼働水準がコロナ前にはまだ至っていない」(運輸・倉庫)といった声が寄せられた。

また、企業規模別に「コロナ禍は終わった」とする企業をみると、「大企業」は50.7%と5割に達した。「中小企業」は38.8%、そのうち「小規模企業」は36.0%となり、「大企業」とは10ポイント以上の差が表れた。

 

コロナ禍前と比較し、自社の働き方が多少なりとも『異なる』企業は66.3%

 

新型コロナ禍を経て、自社の働き方が新型コロナの流行前(2019年以前)と比較してどの程度変化したか尋ねたところ、多少なりとも『新型コロナ前と異なる』とした企業は66.3%と7割近くにのぼった。

 

内訳は、「全く異なる(100%異なる)」企業は2.1%、「8割程度異なる」は7.3%、「半分程度異なる」は19.9%、「2割程度異なる」は37.1%だった。

他方、「新型コロナ前と同じ状態(0%)」の企業は30.7%と働き方がほとんど変わらない企業も一定数存在した。

企業からは「リモートワークやWEB会議の環境が整備されたため、いろいろな働き方が出来るようになった」(機械・器具卸売)といった声があった一方で、「ほぼコロナ禍前と変わらない状態になった」(繊維・繊維製品・服飾品製造)や「屋外作業が中心の業務のため、働き方自体に大きな変化はない」(建設)といった声も聞かれた。

 

まとめ

本アンケートの結果、「コロナ禍は終わった」と捉えている企業が4割にとどまっており、依然として3割を超える企業で「コロナ禍は続いている」と考えていることが分かった。5類へ移行する前よりは警戒の程度は低下しているなかではあるが、感染者が今なお発生している状況や重症化リスクなどから危機意識を持つ企業は多い。

さらに、人流は復活し、経済活動も本格回復してきているが、新型コロナ流行前と同レベルの業績に至っていないといった声もある。現時点で、「新型コロナウイルス感染症は5類に移行しましたが、感染が収束したとは言えない状況が続いて(いる)」といった感染症の専門家の意見もあるなか、すべての企業でコロナ禍が終焉を迎えたと考えるには、まだ時間を要するだろう。

また、コロナ禍以前との働き方の比較においては、劇的に変化した企業もあるが、多くは新型コロナの流行以前から多少の変化にとどまる様子もうかがえた。しかし、テレワークやWEB会議ほかデジタル技術の導入、その適用状況は働き方改革を進展させる一助になったと言えよう。

 企業にはコロナ禍での厳しかった経営環境を乗り越え、蓄積されたノウハウを生かし、新型コロナと共存しながら今後も発展的な挑戦が望まれる。