東京基督教大学教授・西岡力氏講演、「激動する朝鮮半島」

第383回「正論を聞く集い」が16日午後、東京大手町のサンケイビル3Fで開かれ、東京基督教大学教授の西岡力氏が「激動する朝鮮半島」という演題で講演した。西岡氏は、日・米・朝を取り巻く国際的な諸問題とそれに対する日米政府の取り組みについて解説した。

西岡氏は冒頭で、日本政府が2005年11月から安倍官房長官の下、北朝鮮に対し経済制裁を視野に入れた「実力行使」の段階に入り、米国政府も偽ドル紙幣に報復するため「国内法」の適用に踏み切ったと、日・米・朝を取り巻く国際情勢の変化に言及した。更に、安倍官房長になってから、内閣官房の「拉致問題特別チーム」の下に、各省庁の局長以上を集めた「法執行班」が2006年3月に正式に設置され、北朝鮮に対して何ができるか模索が始まったと指摘した。

米国は2005年9月に北朝鮮に対する金融制裁を「財務省レベル」から「国務省レベル」にまで引き上げ、在韓米軍は5026作戦計画(限定爆撃)、5027作戦計画(北による奇襲南進の際、北進して平壌占領)、5029作戦計画(北でクーデターもしくは大規模な天変地異の際に韓国軍と北進して平定)等の策定を終了した。現在、米国は2005年5月から在韓米軍をグアムへ移動し、ステルス爆撃機を配備して北を偵察している。

2006年6月、中国の外為銀行「バンク・オブ・チャイナ」マカオ支店にあった金正日総書記の個人資産を管理する「労働党39号室」口座が、米国の介入により凍結された。世界中の銀行は、米国との取引停止を恐れているため、目下北朝鮮は預金先をベトナムやロシアに移そうと模索していると指摘した。2006年2月、北朝鮮の業者が瀋陽を訪れ潤滑油を購入しようとし、送金できないためドル紙幣をトランクに詰めて持ち寄ったが、中国側に「北のドル紙幣はどうしても信用できない」と拒否されたという。

北朝鮮の海外資産は「労働党39号室」が管理する「金王朝」の個人資産であり、これが全て凍結されると北の政権そのものが続かなくなると西岡氏は予測している。マツタケ等を輸出して得た外貨は全て、国庫ではなく「39号室名義」口座に振り込まれ、軍と公安の幹部を掌握するための資金になっているという。このため米国は、この資金の流れを凍結させようと努力しているのだと指摘した。

国内の朝鮮総連は最近、その金融機関が次々と破綻している。また治外法権としての「税制上の優遇」も撤廃されたため、これら国内業者が「39号室」に資金を送金することもままならなくなったという。また警視庁も、国内大学で理系を専攻している朝鮮人学生を監視し、核などのミサイル技術が北に漏洩しないよう留意しているという。

西岡氏は更に、米下院・国際問題委員会公聴会のハイド委員長がこのほど、旧日本政府の「慰安婦問題」を譴責する決議案を可決したことについて、これには米国内の日系左派媒体が強く関係していると指摘。「日本の正面の敵が北朝鮮で、その黒幕は中共」であることを隠蔽するための工作ではないかと述べ、言論の主たる戦場が米国・国際社会に移っているとの認識を示した。

更に西岡氏は、このほど外国の通信社が中国国内で配信する場合、新華社通信の「検閲」を受けることになり、米国政府はこれに強く抗議したが、こういったことに日本政府も毅然とした態度を採らなければならないと主張した。今は嵐の前の静けさで日本対平壌・北京の勝負の時は近づいているものの、簡単に勝てる敵ではないと結論付けた。

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