【季節のテーブル】ニッポンのお正月
【大紀元日本1月11日】登山家は、山があるから登ります。ニッポンのお正月は、ご来光があるから、山のてっぺんに上ります。山のてっぺんに磐座(いわくら)があれば、そこによじのぼって、そこから誰よりも早く、ご来光が昇るのを待ち望みます。
眺望の彼方からしんしんと、薄明の帳を払ってじんじんと、真っ赤なお日様が昇ってきます。心のしじまを拍(う)つ光が、波紋のように広がります。過ぎ去ったことや、人の行いをすべて許して、未来を迎える心がこうして整えられるのです。
「いってらっしゃい」と送り出し、「ただいま!」の声がすると、コドモやお父さんや、お母さんがお家に帰ってきます。「ただいま」は「ただ今」のことです。まさに今、私は現れましたという意味です。「只今!」というと、そこに何者かが出現します。何者かとは、かつては「神様」のことでした。
「ただいま!」は、永遠の一瞬(ただ今)の、つまり神様のこの世での出現を、要約した言葉なのです。かくして日本語は日常の挨拶のなかに、絶えず神様を出現させています。お家に帰ってくる人は誰であっても、神様の挨拶(ただいま!)を交わしてから入って来るのです。
古代の人々は、日の出の音を聞く聴覚を持っていました。太陽の音連(づ)れを、誰でも聞くことが出来ました。太陽が訪れる響きを聞き届けました。太陽が語る声や、今年一年の始まりのメッセージを聴くことが、初日の出に出会うイベントだったのです。おそらく「ただいま!」という挨拶は、残照のように継承された、初日の出の体験の神聖な響きなのです。
(イザヤ・パンダさん)
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