成長の代償(中国の公害問題)
【大紀元日本2月18日】2月の連休の間に、NHKの番組を視聴した。一つは明治期における中国と本邦の関係、もう一つは中国の公害問題に関する英米系の番組であった。NHKも流石に中国共産党の登場しない時代については公正に報道する事に躊躇はないのか明治期に当時の清国から数千の学生が日本に留学して来た事、或いは中華民国の国父とされる孫文を始めとする革命指導者達の滞在の話、或いは当時の日本の帝国主義政策等についての番組であった、一方、中国の公害問題の番組については改めてその公害の凄まじさに一驚した次第である。先般、チベットへの鉄道開通の番組につき識者から、大紀元への投稿でNHKの対中国スタンスを痛烈に批判する記事を拝見し、はたと膝を打ったが、従来NHKの中国関係報道には、北京中央電視台の代理店と思しきところが少なくないが、今回は製作者が英米系であり、その故かNHKにはとても期待出来そうもないレベルの高い報道であった。准河流域だけでも本邦の人口を上回る人口密集地域なのに驚いたことに飲料水となる准河が公害で汚染されてしまい、水質が相当悪化している様子が放映され、或いは長江の三峡ダムの影響、中国の科学者の言葉で「中国の経済力の不足、科学の水準、更には中国大衆の教育水準の低さから十分な対策が講じられていない事」。或いは公害を出す企業に地方人民政府つまり地方官庁が利害関係者となっていることから公害対策が遅々として進まぬ事、水不足から北京や天津のような大都市すら恒常的に水不足に悩んでいる事などである。
隋の時代から大規模な運河を開削した中国である。悠久の大河である長江の水を北部に送ることで北部の水不足を解決しようとする壮大な意図も理解出来ないわけではないが、既に炭酸ガス排出量では米国に次ぐ存在である中国が環境対策に注力しなければ中国人民はもとより地球規模で災害をもたらすことも間違いのない事実である。既に粗鋼生産では世界一、自動車生産でも本邦を追い越す趨勢にある反面、公害対策の遅れは最早危機的水準に入っているように思われる。
中国の現状、世界の工場にまで成長した光の影で9億の農民の生活向上は遅々として進まず、そのくせ軍備については他国の危惧を招くまでになったが沿海諸省の発展に比べ、内陸各省の開発が遅れているのに、国民の福祉を犠牲にしてまで富国強兵を優先するのは如何なものか。元々、中国は太古の昔から自他共に地大物博の豊穣な大地であった。数千年にわたる悠久の歴史の中で幾多の帝国の興亡があったが、1949年中国人民共和国の発足以来、中国人の最大の財産である貴重な国土をここまで荒廃させ、戦時でもないのに一説では70百万人にも及ぶ犠牲者を出し、貪官汚吏を増殖させ年間8万件にも及ぶ農民や労働者の争議を招き、あまつさえ数万に及ぶと言われる無辜の民の内臓摘出を黙認した政権は人類史上前例を見ない。本邦でも古くは足尾銅山の公害から、水俣病、四日市等々、数々の公害問題がもたらした非自然災害の記憶は新しい。中国が世界の工場とまで云われるような発展を遂げたことは事実であるが、何故、日本の苦い経験を活かさなかったのか悔やまれる。残念な事に公害問題については毛主席の矛盾論や反面教師の主張は生かされなかったのだ。しかし過去はどうあれ、中国人民の健康に問題を生じるに至っては可及的速やかかに公害問題に取り組む事が望まれる。単に中国だけの問題ではない。正しく人類全体に影響を及ぼす地球規模の問題であるが故に。温暖化や重金属汚染の解消には気の遠くなるようなコストと時間を要するが、これは避けて通れぬ問題である。人工衛星をミサイルで破壊する技術も備えた中国である。中央政府や国務院に何処までその決意があるかで全てが決まる。それこそ調和社会の必須条件ではないか。文字通り胡主席の力が試される問題であろう。