堕天使・ルシファーの現代的系譜「マルクス・レーニンから毛沢東まで」

現代をリードする思想的な輝きの原石は、その多くが欧州を原点としてきた。特に、マルチン・ルターの宗教改革とフランス革命以来の民主主義の奔流は、現在も世界に覚醒を与え続けている偉業といえるだろう。そのような進歩的な欧州人でさえ、その思想の原点となったものは紛れもなく「旧約聖書」「新約聖書」であることは疑うべくもないだろう。

そのような神を語る神の言葉としての聖書の中でも特に出色なのは、ギリシャ教父の神学者オリゲネスやジョン・ミルトンなどが唱えた、「神に対しクーデターを企てる堕天使」ルシファーの存在だ。ルシファーは本来、「光」とか「光明」を意味し、天空の神の玉座の右に座ることを許された「天使長」であったが、その地位の高さから傲慢さに魔が差し、また人間とその贖い主である御子イエスに嫉妬し、神に対し反旗を翻して地獄に落ちるというものだ。

この宇宙といいその一部の地球であるといい、最も神聖であればあるほど魔も強烈に入り易い。アジアでは、密教の聖地チベット、中乗仏教の聖地インドシナ半島、三大宗教の聖地パレスチナなど散々な状況で、これが「道魔相争」の所以だ。では、欧州の光り輝く知性の中心、聖地とは一体どこなのであろうか?

19世紀初頭、ドイツのユダヤ系市民が非常に大衆受けするスローガンを打ち出した。カール・マルクスが唱えた共産党宣言「万国のプロレタリアートよ!団結せよ」は、一見すると富の公平分配を理論化し、世界を貧困から救うかのような光明を演出した。しかし、その後の共産主義国家が辿った道程は、その本家となった旧ソ連体制の崩壊をはじめ「惨め」の一言だ。

旧ソ連体制で、レーニンの後を継いだスターリンは、文字とおり人民に権力を譲るどころか国内の大粛清を断行し、政敵などの市民を強制労働収容所に約100万人送致したばかりか、集団農業でも約2000万人近くを葬る「サタン」と化してしまった。隣国の中国でも、毛沢東が復権を目論み、60年代に10年間に渡り「文化大革命」を断行、約8000万人を闇に葬った。

しかしこの世界には、魔の勢力があれば、反対に神の勢力もある。世界に「赤い悪魔」が蔓延り、地球上のあちこちに現代版「ソドムとゴモラ」とも言うべき強制労働収容所が建設され、自由な発想をもつ市民に拷問が繰り返されていた一方で、フランス革命以来の民主主義思想は着実に新大陸で逞しく成長した。

かつて七つの海を支配したアングロサクソンの末裔たちが、プロテスタントの信仰をバックボーンに民主主義を旗印にして、新大陸に後の「世界の警察国家」米国を建設したのだ。現代の米国は、「自由」「民主」「人権」「法治」を世界に伝える伝導師であるとともに、世界の紛争地に空母を派遣する「世界の警察官」の役目もあわせもつ。

現代のルシファーは、クレムリンから中南海に移った。中国は、偽ドル紙幣や拉致などの国際犯罪を「公共事業」とする北朝鮮やダルフールで有名なスーダンなど第三世界と呼ばれる堕天使たちを率いて、米国をはじめとする自由世界に対抗しようとしている。また、その一方で国内では、世界の警察官のブラインドを突いて、無神論を振りかざしては、一般市民から信仰の自由を奪い、チベット密教を始め、現代では法輪功を信じる人たちから内臓を「失敬」して私腹を肥やす暴挙に出ている。

共産主義も民主主義も同じ欧州から出た。しかし時を経て、この二つの思想をそれぞれ信奉する二つの勢力が、極東で再び衝突しようとしている。真の権力の玉座は、為政者にあるのか、それとも市民にあるのか。かまびすしい北京五輪の喧騒とは離れ、水面下で音もなく、静かであるが、地球規模の「審判の時」、「勝負の時」は着実に近付いている。

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