意識と肉体の分離実験に成功=欧州の科学者
【大紀元日本10月3日】仮想現実体験ゴーグルを用いて脳への知覚シグナルを混乱させ、自分の意識が身体の外に出たような感覚、いわゆる「体外離脱」体験を誘導することに成功した。
米科学雑誌「サイエンス」を発行するAAAS(米国科学振興協会)のウエブサイトによると、カロリンスカ研究所(ストックホルム)のHenrick Ehrssonと大学病院(スイス・ジュネーブ)のOlaf Blankeが率いる別のチームは、ゴーグルとビデオ映像を使って被験者が仮想現実の身体を感じるという幻覚を作り出したという。
Ehrssonの実験
被験者にゴーグルを装着させ、そのゴーグルを介して被験者はカメラに映し出された自分の後ろ姿を観察する。科学者は、カメラの下の方に向かってくる細い棒を目で追うように被験者に指示し、同時に、被験者の胸を棒で軽く打つと、被験者はカメラがある位置よりも後ろ、実際座っている椅子の位置よりも2メートルくらい後ろに居り、他人の身体を観察しているような感覚を覚えたという。
また、Ehrssonは、ハンマーをカメラの下方に振り下ろし、その映像を被験者に見せながら、皮膚伝導の値を測った。この数値は恐怖などの情動反応を反映するが、被験者はまるで実際の肉体から抜け出して、仮想現実の身体に入ったかのような反応を示していた。
Blankeの実験
Blankeらは、ビデオ映像を3次元のホログラムのようなシミュレーションに変換し、同様に被験者に仮想現実ゴーグルを装着させて映像を見せた。その後目隠しをし、後方へ誘導して元の位置へ戻るよう指示すると、被験者は、仮想現実の身体が立っていた位置に戻ろうとする傾向がみられた。
2つの論文は、「多感覚の衝突(multisensory conflict)」が体外離脱の鍵であると結論づけており、知覚情報を処理する脳の回路間の遮断が、体外離脱体験を引き起こすのではないかと述べている。薬物使用者やてんかん患者らが、脳の機能不全で体外離脱を体験することは、過去にも報告されている。
Ehrssonは、「私は、どうして我々が自分の身体の中にいると感じることができるのか―体内体験(in-body experience)と言ってもいいが、なぜそれを感じるのかということに興味を抱いてきた。何世紀もの間議論されてきたこの哲学的な問題を、実験することは難しい」としながらも、「この実験から、主観的な視覚認知が体内体験(in-body experience)にとって重要であるという事が分かった。言い換えれば、我々は自分の目がある位置に自分がいると感じるのだ」と述べている。
論文は、「サイエンス」8月24日号に掲載された。