北欧諸国へ接近 中国、北極圏ルートの要地開拓
【大紀元日本12月20日】ノーベル賞問題でノルウェイとの貿易協議を停止している中国だが、12月9日に中国国営企業の中海油田服務(China Oilfield Services)が、ノルウェイのスタトイル社(Statoil)と北海油田の掘削作業に関する契約を締結した。
同契約は中海油田のサイトに発表されたもので、ノルウェイの国営企業スタトイル社によると、老朽化した掘削装置を新しくするための契約で、北海油田からの安定供給の目標に見合う事業という。
気候変動がもたらす 氷解と技術の進歩のおかげで、北極海は、短距離の物流ルートや天然資源の可能性が表面化してきた。それをチャンスとみなし、中国は北極圏に拡張をはかり、北欧諸国との協力体制を強化しているようだ。
北極圏ルート
今年3月、ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)が『氷解する北極圏のために準備を進める中国』(原題:China prepares for an ice-free Arctic)と題する報告書を発表した。
報告によると、バレンツ海経由でヨーロッパとアジアをつなぐ最短ルートは、夏季に、上海からハンブルグまでの距離を6400キロ短縮する。スエズ運河経由の従来のルートは海賊行為に遭いやすく、海上保険が10倍以上に膨れ上がっている。 すでに北極海は、日本と中国への石油の輸送船の「高速ルート」の役割を果たしており、 北欧諸国が中国から欧州への新たな玄関口になる可能性は十分にある。国外資源に依存する中国政権にとって、これらの国々との国交を深める意義が増している。
北朝鮮が東の拠点
中国は北朝鮮の咸鏡北道(ハムギョンブクド)羅津(ナジン)港の使用権契約期間(10年)をさらに10年延長する協議が進行中だという。 5埠頭あるうちの1号埠頭が中国に提供されており、設備拡張作業が始められている。工事が終わり次第、物流輸送が始まると今年3月の中央日報が報じている。
中国は、 同港と吉林省、 黒竜江省とをつなぐ道路などの新たなインフラ建設のため、100億米ドルを投資。鉄道、家屋も建てられる予定だ。 羅津 は中国の特定経済地区に指定されている。中国はこの小さな港を手中におさめ、北極ルートの寄港地にすることを意図しているとForeign Policy Blog( Foreign Policy Association発行)は指摘する。
アイスランドに接近
人口は30万人ほどのアイスランド にも、 北京政権は目を向けている。資金繰りが破綻した2008年以来、アイスランドは国外からの投資を歓迎しており、中国との関係が緊密化している。
2008年11月、 アイスランドは、 中国の代表団を空軍基地に招き、ロシアに衝撃を与えている。 2006年に、アメリカの『地球規模の戦力再編成の一環』により、将兵と戦闘機が撤収され、ケフラヴィーク米軍基地が閉鎖された経緯があるが、 北海ルートを通って北米に向かう船舶の燃料補給値として、 同基地を中国が利用することも考えられる。
また、アイスランドと中国は今年6月に通貨スワップ協定を結んでいる。谷口智彦教授が「ウェッジ」誌で指摘するところによると、約5億1100万米ドル相当のクローナと人民元を双方の中央銀行が用意し合い、二国間の取引がクローナと人民元のみで行われることを意味し、ドル離れにつながる。西欧の民主主義国陣営の一角が中国の経済圏に取り込まれたと同氏は指摘している。
民主主義国家に独裁政治を導入
数年前からアイスランドに手をつけた痕跡があった。当時の中国江沢民元主席は、2002年に初めてアイスランドを訪問している。外交、政治、ビジネス上の関係を深める目的で、特にビジネス関係は、1971年に国交が始まって以来、小国のアイスランドが望んでいることだった。また、アイスランドが国連安全保障理事会に選出されることもアイスランドの願いであり、大国中国との国交は前向きなものと受け止められた。
訪問に際して一つの出来事が起きた。当時欧州の法輪功学習者が、周辺国からアイスランドに入り、法輪功弾圧を指示した江沢民に抗議しようとした。これに対して中国側はアイスランドに法輪功学習者の入国を禁止するよう申し入れ、アイスランドは要請をそのまま受け入れ、不完全なブラックリストを用いて入国を管制。
アイスランド人は、独立国家を誇りとしており、紀元930年、世界初の議会を設定したとして、最初の民主主義国家としてのプライドを持つ。当時のロイターの報道によると、90%のアイスランド人が、入国禁止令を受け入れていなかった。「禁止令に嫌悪を感じる」「首席の29名の武装護衛を恐れて、禁止令を施行するなんて、全く信じられない」「この民主国家でこんなことが起こったことにショックを受けている」という国民の声があちらこちらで聞かれた。しかし、アイスランド政府は国民の声を無視し、専制政治の民主主義への介入を容認した。
西ヨーロッパでGDP4位、成長率は1位だったアイスランドは、2008年の資金繰り困難で破綻した。破たんの数ヶ月前、英国の経済誌が発表する「世界平和度指数」のランク付けで、アイスランドは140カ国中トップの1位であった。通貨の格付けは前年までAAAだった。国家経済破綻後、北京政権は、アイスランドへの港や銀行などの投資や買収を加速した。
専制主義の拡張
これまで、欧米の民主主義国家は、中国との貿易関係を深めることで、中国に良い影響を与えていくというスタンスに立っていたが、実際にはアイスランドの例に見られるように、北京政権の悪い影響が民主主義国家に浸透している。フォーラムの場などを利用して、中国政権は小国への影響力を駆使して、自国の経済収益に不利になるような、人道に基づく他国からの介入を阻止している。
北極圏ルートの開拓、確保においても、中国政権は小国への影響力を築き上げているようだ。ノルウェイ、アイスランドなどの北欧諸国への専制主義国家の影響力が懸念される。