取材記者全員に「金一封」 「億万長者クラブ」の両会
【大紀元日本3月8日】厳重警備されている「両会」だが、ちょっとした隙間からニュースがこぼれてくる。国内紙・経済観察報の両会取材記者・陳勇氏がこのほど、自らのミニブログでつぶやいたこんな一言が波紋を広げている。「昨日の劉永好さんの『紅包発表』に行った記者はみな金一封もらったようだ。残念ながら、俺は行き損なった」
この羽振りのよい「劉永好さん」とは、養鶏業から巨大な富を築いた四川新希望集団の董事長で、フォーブス誌が発表する中国長者番付トップテンの常連。政治協商会議の代表として両会に参加したこの日は、記者たちを招き、自らが両会で提起する議題を発表し、そして、来場の記者全員に「紅包」(金一封)を渡した。
多くの制限を受けている両会報道にとって「新鮮」なこの話題はたちまち注目を集めた。「その金一封はいくらなんだ?」との問いに陳勇記者は答えなかったが、1人800元(約1万円)との情報が流れているとラジオ・フランス・インターナショナル(RFI)は明かしている。それに対して、劉董事長側は記者に渡したのは200元(約2500円)の交通費だったと弁明している。
劉董事長のみならず、今回の両会代表に大富豪が多いことが注目されている。全人代開催の前日にあたる4日、李肇星・報道官が開いた記者会見の席で、米ブルームバーグ記者は、全人代代表には38人の大富豪が参加しており、彼らの個人資産はいずれも米国で最も裕福な議員の資産(約4.5億ドル)を超えていると指摘した。
また、英国人フージワーフ氏(中国語名は胡潤)が主宰する「胡潤研究所」の報告によると、今回の全人代に参加する2987人の代表のなかで、富裕層の上位70人の総資産が750億ドルを超えており、アメリカの同金額の48億ドルを大きく引き離している。資産120億ドルで中国の長者番付1位となっている飲料大手「娃哈哈(ワハハ)」の会長・宗慶后氏も全人代代表に名を連ねる。
また、胡潤研究所によれば、2010年に中国における政治身分を有する、資産10億元(約1.5億ドル)超の富豪の数は1363人に上り、うち156人は全国人民代表か政治協商会議代表だという。さらに、彼らの政治身分が多重であることも多いという。建設機械メーカーの「三一集団」の梁穏根・董事長は全人代代表で全国工商聯常務執行委員。大手デベロッパー「大連万達」の王健林・董事長は政治協商会議代表でありながら、共産党十七大代表、全国工商聯副主席も務める。
格差社会の中国で、両会に集まる各地の地方幹部と既得権益層。オーストリアテレビ放送は「中国の人民代表大会は『億万長者クラブ』だ」と揶揄する。米ブルームバーグも、全人代代表の資産背景が、温家宝首相が約束する「格差社会の解消」は大きな挑戦であることを物語っている、と報じている。
全人代は中国の立法と経済財政計画を決定する最高権力機関である。しかし、富豪クラブと化した全人代こそが「財産税を徴収する最大の障害である」と、シンガポール国立大学で公共政策を研究する黄静教授は指摘する。「富豪たちが、助けを必要とする人々の利益を代表することは到底できない」と語った。
また、高級官僚の財産公開をめぐる論議も16年間議論され続けた後、ようやく昨年、財産申告の義務付けが決定された。一方、申告内容は非公開とし、また官僚級以上を除き申告対象に預貯金は含まれないなど、「骨抜きの内容」だと批判されている。
ちなみに、前出の劉永好董事長が記者たちに渡した金一封を「羨む」陳勇記者には、同社から「口腔洗浄器」が送られたようだ。どう解釈していいかわからない陳記者はそれをミニブログにアップし、フォロアーに見解を求めた。「口を洗って来い(しゃべるな)」と皆が解読する。