【大紀元日本5月25日】経済が発展するとさまざまな利権が発生し、その利権に欲望にとりつかれた人間が群がるのは日本においても実際にあることなので、中国でのことも理解しやすいと思う。ただ、中国は経済発展のスピードがとてつもなく速いので、その腐敗する速度も同様に速く、広がりと深刻さも尋常ではない。
本書は2部構成となっていて、第1部は「黒社会化する中国政治」第2部は「強権統治下における中国の現状と展望」である。
「黒社会」の意味については訳者による丁寧な注がついているので一部引用させていただく。
【黒社会とは、中国伝来の秘密結社の性格を帯びた独特の刑事犯罪組織のことである。もともとこの言葉は英語のアンダーワールド・ソサエティの訳語であり、1920年代から1930年代にかけて「魔都」と呼ばれた上海で猛威を振い、裏社会だけでなく表の社会まで制圧に至った青幇(チンパン)や紅幇(ホンパン)といった巨大なギャング組織を指すものであったが、共産党政権の樹立とともに大陸では死語となっていた。その本格的な復活は80年代であり、改革開放政策の進展と軌を一にしている。】
著者の緻密な調査により「黒社会が権力者に近づき賄賂を贈り、権力の後ろ盾を求める」「権力者も黒社会を利用し相互に利用しあい」「最後は黒社会のボスが権力そのものに入っていく」「そして国家そのものが腐敗していく」過程が実例をあげながら書かれている。また歴史的背景や社会構造の問題点が多角的に分析されており、腐敗そのものが日常化・制度化している中国社会の深刻さが伝わってくる。
それにしても、である。その腐敗ぶりは日本人にはちょっと信じられないくらいだ。警察と黒社会が手を組み無法社会となれば、なんの力も持たない庶民は彼らの無理難題や暴力に耐え忍ぶしか方法は無くなってしまう。
ましてや、国家規模の無法化にたいして庶民は・・・。
著者の何清連(か・せいれん)は1956年、中国湖南省生まれの経済学者・ジャーナリスト。98年に『現代化的陥穽』(邦訳『中国現代化の落とし穴』)を出版し知識人層から圧倒的な支持を得た。しかし、その後も彼女は中国共産党のタブーに踏み込む言論活動を続け、当局から様々な圧力を受けたため2001年に米国に活動拠点を移した。
『中国現代化の落とし穴』については2005年1月20日に大紀元に何清連氏自身が質問に答える形で語った記事がすでに掲載された。この記事をあわせて読まれると中国社会の実態がもっとはっきり見えてくると思う。
http://www.epochtimes.jp/jp/2005/02/html/d12076.html
書名 『中国の闇』マフィア化する政治
著者 何 清連[著] 中川 友[訳]
出版社 扶桑社
価格 1,680円(税込)年 2007年11月
ISBN 978-4-594-05521-9
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