【お勧め本】 『中国少数民族事典』 

【大紀元日本12月28日】

最初に問題を一つ。

「ホジェン族」「オロチョン族」「トン族」といえば、どこの国の民族でしょうか? 

答えは、中国の少数民族の名称です。

中国には55の少数民族がいる、ということをご存じの方は多いと思う。では、どんな民族がどの地域に住みどのような言語を話し、宗教や生活は・・・となると、スラスラ答えられる人はかなり限られてくると思う。

また少数民族といっても、55の民族の総数は9400万人(人口は1990年のもの、以下同じ)を超え、中国の総人口の8%を超える。

本書では、55の少数民族を言語別に分け、それぞれの民族ごとに人口・居住地域・宗教・風習などが紹介されている。たとえば、「アルタイ語族の集団」→「ツングース語群の民族」→オロチョン(鄂倫春)族 【オロチョン族は総人口7004人で、黒竜江省に52%、モンゴル地域に約46%居住している。現在ではエヴェンキ族の下位集団とされている・・・・】というように記述されている。

また、紹介文章だけでなく写真・図版も多用され、理解しやすい構成になっている。写真に写っている人物を見ると、中東や西洋の民族かと見まがうほど多様性があることに驚かされる。

また少数民族といっても、チワン(壮)族は1555万5802人と最大の人口を誇り、スウェーデンやポルトガル、ギリシャなどの国家の人口より多い。

数千人、数万人の人口規模の少数民族から、満州族(約984万人)回族(約861万人)ウィグル族(720万人)など国家規模の民族まであり、それぞれに固有の文字や言語、宗教や食事、衣服、風習などの文化がある。このような事典の必要性が分かる。

本書では民族の紹介の他にコラム欄も設けられている。その一部をご紹介したい。

【中国では、都市に居住するものと、農村に居住する者の戸籍が異なり、農業戸籍を持つ者の都市への流入を防いでいた。ほとんどの少数民族は農業戸籍を持っている。12.5億人を超える人口を抱える中国では、八割近い人々が農民として分類され、都市のスラム化などを防いでいた。つまり農民というのは職業ではなく、日本の江戸時代のような士農工商的な身分・階級的なものとして認識されている。】

この短い文章から、中国における農民、とりわけ少数民族のおかれている立場が垣間見える。

【大紀元の記事から】

中国少数民族、言語と文化喪失の危機http://www.epochtimes.jp/jp/2007/08/html/d92004.html

書名  『中国少数民族事典』 
著者  田畑 久夫・金丸 良子・新 免康・松岡 正子・索 文清・C.ダニエルス
出版  東京堂出版
価格  3,990円(税込み) 2001年9月出版
ISBN  9784490105926
※2012年6月現在、本書は出版社切れでした。図書館、ネット販売をご利用ください。

                              

 (佐吉)