習近平政権の政治局会議 株式市場など経済運営方針あきらかに
中国の習近平国家主席は4月29日、共産党中央政治局会議を開き、通貨政策、株式市場、不動産市場、失業、物価など諸問題をめぐって議論し、今後の経済政策運営に関する指導方針を決めた。
習国家主席は「現在中国経済の下ぶれ圧力が依然に強く、一部の実体企業の生産と経営が難しく、市場におけるリスクも増えているため、「持久戦となる用意を行った方がよい」と強調した。中国経済に関して課題が依然に山積みである現状があらためて浮き彫りとなった。
同会議では、中国共産党指導部は「積極的な財政政策と穏健な金融政策を実施していく」と示した。去年12月開催した中央経済工作会議で提起された「積極的な財政政策を強化する」、「柔軟かつ適度で穏健な金融政策を実施する」と比べて、「強化する」と「柔軟かつ適度」との表現がなくなった。今後、金融政策と財政政策がやや引き締める方向に移行するとのシグナルが読み取れる。
人民銀行(中央銀行)によると、1~3月期中国新規貸出額が前年期比で9301億元(約15兆9977億円)増加の4兆6100億元(約79兆2920億円)で、過去最高となった。市場関係者は新規貸出額の急速な増加でマクロ経済に長期的なリスクの発生を恐る政府が金融安定を図り、信用拡大の抑制で政策調整を行っていくとの観測が広がっている。
株式市場
習主席は株式市場について、「株式市場の健康な発展を保持し、市場監督を強化し、投資家の権益を保護すべき」と述べた。昨年6月末中国株式市場の暴落が発生した以降、習主席が公の場で株式市場を言及したのが今回7回目となる。中央政治局会議としては初めて言及した。
一方、政治局会議開催と同じ日に、中国国営新華社が昨年6月株式市場混乱の主因となるインサイダー取引と証券市場操作の容疑で、澤頤投資の徐翔社長ら4人を正式に逮捕したと報じた。
報道によると、正式に逮捕されたのは徐氏のほか、国有証券大手「中信証券」の程博明社長と同社幹部の劉軍氏と許駿氏がいる。また同社副会長の劉楽飛氏を含む12人の幹部がすでに離職しているという。劉楽飛氏は、共産党中央政治局委員で江沢民派閥の劉雲山氏の息子だ。
昨年6月から今年初めまで起きた株式市場の混乱について、多くの報道では共産党内で江沢民派閥が習近平派閥に対して行った「経済クーデター」だと指摘された。株式市場の混乱に江派閥の劉雲山氏一家が深く関係しているという。
政治局会議の開催とインサイダー取引の容疑者の逮捕が同じ日であることは、習近平氏が金融業界における江派閥の動きを制止し、金融業界での反腐敗キャンペーンを一段と強化していくことを推測できる。
人民元政策
政治局会議では「人民元為替レートの基本的な安定を保持し、徐々に市場の供給と需要を基礎とした双方向ボラティリティで柔軟性のある為替システムに形成していく」との方針を示した。これまでの重要会議で示された表現と同じだ。
市場では、米国連邦準備制度理事会(FRB、中央銀行)の早期追加利上げ観測が後退したことで、対ドルでは元高が進んで切る。29日人民銀が発表した元の対ドル基準値を、前営業日の1ドル=6.4954元から、1ドル=6.4589元と大幅に元高に調整した。
失業と不動産市場、物価
習主席は国有産業への供給側構造的改革の実施で生じた失業問題について、「雇用の安定を保持し、従業員の再就職問題を妥当に対応すべき」と述べた。中国国有企業の過剰生産能力削減で今後約500~600万人の従業員が失業となるとみられる。失業人数の拡大で新たな社会不安の要因となるかと世界から注目されている。
不動産市場について、「不動産の在庫削減を順番に行っていく」とした。1~3月期において、在庫削減方針で政府が不動産市場に対して緩和的な措置を行った結果、中国の大都市と一部の中都市では不動産価格が大幅に上昇した一方で、在庫が比較的に多い3、4線の小都市では在庫が減少する気配が全くなかった。市場関係者は今後各都市の状況に応じた不動産市場の引き締め政策が発表されると予測。
物価について、政治局会議は「物価変動を注視し、価格改革を推し進めていく」とした。中国の消費者物価指数(CPI)は金融緩和の影響で、昨年11月以降から上昇している。
(翻訳編集・張哲)