中国共産党機関紙の元スタッフが5月9日までに大紀元の取材に応じ、自身の辞職表を公開した。そこには「もう(政府や役人を)賞賛したくない、もう(国民を)脅したくない」といった内容を記していた。(呉君梅さん提供)
大紀元インタビュー

共産党機関紙の元スタッフ、当局の世論操作や思想コントロールを暴露

中国共産党機関紙の元スタッフが5月9日までに大紀元の取材に応じ、国営メディアによる国内情報や世論操作の手段を暴露した。

呉君梅さんは、2014年から中国共産党機関紙「人民日報」電子版「人民ネット」の最重要部門である世論状況検測室に勤め、企業調査の役割を担っていた。現在は、息子の留学のためオーストラリアに移住。

人民ネット在職時は、政治体制に対して多くの不満があったものの、中国共産党の本質を深く考えることも、疑問を呈する勇気さえなかったという。海外で、はじめて情報封鎖のないインターネットの世界にふれ、中国当局が隠ぺいする中国歴史・政治・社会の事情を初めて目にした。

呉さんは、特に大紀元時報の社説「共産党についての九つの評論」を読んだ後、「なぜ中国にいた時、苦しかったか」をはっきり理解することができたという。呉さんが大紀元に提供した自身の辞職表には、「もう(政府や役人を)賞賛したくない、もう(国民を)脅したくない」といった内容を記していた。

呉さんは人民ネットで務めていた時、精神的な苦痛を和らげるためにキリスト教に入信した。呉さんの上司にそれを知られた時、「我々は党のメディアだ。あなたに対して、マルクス主義のジャーナリズムを求めることだ。政治工作を行うものとして、その他の信仰を許すことができない」と告げられた。上司は呉さんに対して、教会の集会に参加してはいけないと要求した。その後、上司は呉さんのことを人民ネットのトップ指導層に報告し、国内安全保衛部の関係者らが呉さんに事情を聞いた。

 24時間ネット検閲する人民ネット「世論状況検測室」

呉さんは、世論を監視し、検閲する業務の内容を暴露した。人民ネットは膨大な資金を使って、ネットに大量の情報を挿入したり、削除したりしているという。

人民ネットの世論状況検測室のオフィスには、ネットのキーワードの読み取りや他の機能を備える何百台の機械が置いてあり、毎日100人以上の専門スタッフが24時間ネット上の情報を検閲している。

また、政府にとってマイナスな世論を消すため、各省の共産党委員会の宣伝部(広報部門)とも密接な提携関係を結んでいる。また人民ネットの検閲スタッフは、他の地方政府と連携して育成されている。

「人民ネットが一部の地方政府や企業と『協力』することはしばしばある。例えば、何かの汚職事件やスキャンダルが起きたら、賄賂を受けて、人民ネットが世論操作でその地方政府や企業の世論をポジティブに変える」という。

 

 共産党政権にとって不利な世論を消す方法

呉さんによると、共産党政権にとって不利なニュースや記事に対して、2つの対処方法がある。1つ目は、その情報を発信しない。そのため、国民が何かが起きたのかを知ることが全くできない。

2つ目は、もしマイナスなニュースが報道されたら後の対処法で、人民ネットが育成した大量の「ネット評論員」と、フォロワー10万人を超える人気の高い発言者からなるグループを通じて、反論や共産党をたたえる書き込みを莫大に発信する。「これで、共産党のマイナスな情報が完全に押し流される」。

人民ネットに在籍する大量の評論員は、巧みな「話術」で読み手を翻弄する。「ネット上で、起きていないことを起きたかのように、または実際に起きた事を、起きていないと偽情報を発信する。真実を全部隠す。今も1989年の六四天安門事件について、軍が戦車で学生を轢いたとは一言も言わない」。

呉さんは、六四天安門事件で軍の鎮圧により学生が殺害されたことを、オーストラリアで知った。「中国国内の人たちは六四天安門事件についての印象は、学生たちが抗議デモを行ったことに留まっていて、その後の軍による鎮圧などを知らない。また、軍の鎮圧で亡くなった学生の多くの家族の苦しみを知る由もないし、誰も関心をもたない」。

 人民ネット ブラックな収入源

呉さんによると、株式市場に上場する人民ネットには2つの黒い収入源がある。1つ目は、前述の各地方政府との密接な世論検閲提携からの収入だ。人民ネットは各地方政府から毎年、何十万元を徴収している。なかには100万元以上(約1700万円)の資金を渡す地方政府がある。

その見返りとして、地方政府に重大な世論批判が起きた時、国内メディアとしての人民日報や人民ネットで反論し、地方政府にとって有利な方向に誘導する。また「五毛党」を使いネット世論をかき乱し、核心の問題から国民の視線を移したり、責任を転嫁させたりして、地方政府のイメージを再建する。

2つ目は、企業を監督する権利を濫用して、企業を脅迫して資金を得ること。これは、例えば、人民ネットの企業苦情プラットフォームで受け付けた意見を利用する。苦情があった企業へ、人民ネットは専門スタッフを派遣して実況調査を行う。その企業に不法行為があった場合、人民ネットは記事掲載で原稿確認をしてほしいとの口実を付けて企業トップと会う。その時、企業トップに対して、企業の不法行為を暴露する記事を掲載してほしくいないなら資金を出せと脅迫する。

企業から資金を得た後、人民ネットがまたその企業について有利な情報を流し、不利な世論を消していく。呉さんによると、人民ネットは不法行為の疑いのある企業1社から何十万元から百万元の金を受け取るという。

呉さんの主な仕事はこの企業調査だった。最も多かったのは環境汚染に関する企業だという。「この仕事を続けていくには本当に苦しかった。普通のメディアなら、真実を報道し、不正や不法行為と現象を批判し、関連する政府部門に対して国民の権利を守るようと提言することができる。しかし、人民ネットは違う。私が関係者に対して行った取材内容と録音を上司に渡した後、上司が取材内容を取引の条件として、その企業と取引することにしていた」。

 完全に思想をコントロールされた中国国民

呉さんは最後に、国家レベルで思想のコントロールされることの脅威と、国民の不幸を語った。「中国共産党は、世論操作を行うほか、国民を経済的負担をかけて毎日忙しくさせることで、思考する余裕を与えないようにしている。ほとんどは医療福利がなく、家を買うので精一杯で、生活苦にさいなまれている。余裕のない国民は本当に悲しい。同時に、怖いことでもある」。

(翻訳編集・張哲)

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