2016年7月、上海市内でぬいぐるみ製品を運ぶ労働者。中国では最近の税制改革をうけて、複雑な税制に注目が集まり、怒りの声があがる(JOHANNES EISELE/AFP/Getty Images)
ステルス税の国

税収は世界第2位の中国 課税額は収入の半分

中国政府は5月1日から、思案に20年を費やしたとされる最大規模の税制改革を施行した。このことで、6年前に発表された、中国の税制が詳しく載った有力誌の記事が、再び注目を集めている。米経済誌フォーブスによる2009年「世界重税国家ランキング」には、中国はフランスに次ぐ世界第2位の税収大国であることを、多くの国民は知らない。

 課税を知らない国民 「ステルス」課税も

『南都週刊』が2010年に報じた『中国の隠れた税収一覧 驚愕の事実』と題した記事によると、中国人の多くは、個人に納付義務のあるのは所得税だけだと考えているが、それは誤りで、複雑な税制度のなかで多く徴収されている。世界銀行によると、2012年で中国人労働者の収入に対する税率が45%にも達するという。

中国の税金は個人所得税と流通税に大別できる。個人所得税は全税収の7%を占めており(2014年の統計)、流通税とは商品の流通過程で課税される諸々の税金の総称で、増値税、営業税、消費税、関税からなる。間接税である流通税は一般市民には課税額が分かりにくいため、「隠形税(隠れた税、ステルス税)」とも呼ばれている。

実は中国人は日常生活を送りながら様々な形で納税している。住宅や車の購入といった金額の大きなものから、食べ物や衣類といった生活必需品の購入まであらゆる消費活動が納税している。自宅で一口の水道水を飲んでも、そこには6%の増値税が課税されている。ただお金を使うだけで、納税の義務が発生する。

冒頭の記事では、妻と子の3人暮らしの男性Aさん一家のケースを追う形で、生活のなかの納税を説明している。


Aさんと妻は2人とも読書好きで、子どもにもよく本を買い与えている。2人は本を十数冊とCDを3枚購入し、約700元(約1万1300円)を支払った。今回の買い物で、Aさん宅は約100元(約1600円)の増値税を納付した。

Aさんがレストランで食事をする時の予算は大抵200元前後(約3200円)だが、その中には5%の営業税が含まれているため、外食をするたびに10元(約160円)の税金を支払っていることになる。

物品の購入に際し課せられるのは増値税で、外食や映画鑑賞、スポーツ施設で運動する時などに課せられるのは営業税。営業税が課せられるのは、建前上は企業だが、企業は税金分を販売価格に上乗せするため、結局は消費者が税金を肩代わりすることになる。

高級化粧品の税率は30%と定められている。Aさんの奥さんが購入した基礎化粧品と目元クリームの総額は約1000元(約1万6000円)だったので、300元(約4800円)を納税する。

ココ・シャネルの香水100mlの小瓶の市場販売価格は1480元(約2万3800円)だが、この中には17%の増値税のほか、30%の消費税と都市建設維持税が含まれているため、それぞれの税額は251.6元、444元、48.7元となり、課税部分の合計は744.3元(約1万2000円)にも上る。つまり商品価格の半分以上が税金となる。

鏡の前で美容クリームを塗る奥さんを眺めながら、Aさんは思わずつぶやいた。「その顔を手入れするために、一体どれだけの税金を払ったんだ?」


増値税、営業税、消費税の税金3本柱に加え、中国人は買い物をするたびに1%から7%の都市建設維持税を納付している。例えば、街中で100元のCD1枚を購入した場合、増値税の17元に7%を乗じた1.19元(約19円)が都市建設税として販売価格に含まれている。

文末にはAさん一家の3年分の平均課税額が計算されているが、そこには課税額が収入の51.6%を占めるという驚くべき結果が記されている。

 

「中国人は世界一の高額納税者 だが社会保障は世界最低」

このように、中国では諸々の物品に世界でも類を見ないほど高額の税金が課せられているが、増値税や消費税といった間接税は表示価格にあらかじめ転嫁されているため、消費者が税を負担していると実感しづらい。このため、徴収する側にとっては非常に都合のよい制度だといえる。

中国作家協会発行の文芸雑誌『作家文摘』のバックナンバーに、中国と米国の物価を比較する記事が載せられていた。そこでは、中国国内の製品にかけられる税率は、米国の4.17倍、日本の3.76倍、EU15か国の2.33倍に相当し、世界一高額だと結論付けられている。

「中国の税率がここまで高いのは、国家予算のほとんどが間接税でまかなわれているからだという。ごく単純な話だ。様々な名目の税金が物品の流通過程で次々と価格に転嫁され続け、最終的には消費者にそのツケが回ってくる」と記事は指摘する。

(翻訳編集・桜井信一/単馨)

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