すでに引退している浙江省の元共産党幹部が、知る人ぞ知る党幹部厚遇政策の実態を公にした。「地方公務員は50歳以上で第一線を退くが、それからの待遇の方が(それまでより)もっとよくなる。そしてすることもないのにポストだけは確保されている「散吏(大した役目もない役人)」となる」として、党幹部の享受している待遇が、一般市民とあまりにもかけ離れていることを暴露している。
そのうえで彼自身は、長年にわたりこの政策の恩恵を受けてきたことに対し、不安と羞恥を覚えていると述懐している。だがこの発言から2週間後、地元当局はこの人物に党内厳重警告処分を与えることを決定した。このことが中国メディアによって報じられたところ、ネット上で激しい議論が沸き起こり、ある事情通がこの不条理な処分に不満を抱き、更に多くの内情をネット上に公開した。中国共産党を冷静に分析している市民らは、ついに共産党が崩壊する時が来たと認識しているという。
中国メディアが党幹部厚遇の内情暴露文を掲載
4月6日、広州の日刊紙「信息時報」に「慕毅飛」と署名された一文が掲載された。そこには、この人物が名ばかりのポストについて厚遇を受けていたことが記されており、このことについて申し訳なさで心が張り裂けそうだとの心情が吐露されている。
文中では週刊紙「瞭望」のある記事を読んだ時のことが記されている。そこには、湖南省の地方幹部達が上層部に対し、「50歳以上の公務員は第一線を退き、以前の役職の時を上回る好待遇が与えられる」という規定を自身へ適用するよう申請を出したことが記されていたという。
筆者である慕毅飛は自分自身も浙江省の「散吏」だったことに触れ、現在は引退しているため、過ちを正したくともその機会がないことから、自分が抱えている罪悪感や謝罪の気持ちをこうして文章にしたためることにしたと記している。決して少なくはない給料をもらっていることを恥じており、汗水を流しながら辛い毎日を送っている労働者の人々、そして朝から晩まで働いている下部組織職員らに顔向けができないため、ことの詳細を説明することにしたと語っている。
彼自身はこの8~9年間、何一つ仕事をしていないが、給料や福利厚生面での待遇は以前と変わらず、年給は12万元(約200万円)以上だという。そして仕事をしないのは、自分の意思で働かないのではなく、政策によって実務にあたることが許されていないからだと自身の置かれている状況を説明している。
また彼は文中で、労働者たちが朝から晩までへとへとになるまで働いてお金を稼いでいることを挙げ、このような疑問も呈している。「我々のような無駄飯食いを養ってやる理由がどこにある?(このことについて)彼らから意見を聞いたことのある人間がいるのか?彼らに対し罪悪感を持たないというのなら、これはまさに恥ずべきことだと感じている」
また彼は、50代といえば豊富な経験を備え、気力も充実し、まさに脂の乗り切った時期だというのに、この年代が「相当の給料をもらいながら家で暇を持て余すのは、莫大な社会的損失だ」と語り、彼らの中には、犬の散歩やテレビ、ネットオンラインゲームに興じて暇をつぶしているものも少なくないことを挙げ、次のような疑問も投げかけている。
「こうした暇人たちが中国全土にどれだけいるというのか?彼らを養うために、どれだけの財政収入がつぎ込まれているのか?具体的な数字を明らかにするべきだ」
「経験豊富で働き盛りの公務員が閑職に追いやられ、能力を発揮する場が与えられないでいるのに、なぜ毎年新たに多くの公務員を雇用しなければならないのだろうか?もしそれが就職難を解決するためだけだとしたら、この方法は効率が悪すぎる。また関連法規では30年間勤務しなければ早期退職はできないと規定されているにもかかわらず、一部の地方では勝手に30年間が20年に変更されている。これは法律違反ではないのか?」
だがこの一文が新聞に掲載された2週間後、地方当局はこの発言が政治紀律に違反しているとして、同氏に対し党から厳重な警告処分を与えることを決定した。
ネット上で大論争
慕氏が懺悔文を書いたため党から処分されたことに対し、ネット上では様々な意見が飛び交っている。
同氏を批判している日刊紙「今晩報」は、同氏が数年前にSNSウィーチャットへ投稿した一文を記載して批判している。同氏は以前、メディアが報じた「四川省蒙安地区が党員に対し、勤務中には中国共産党の徽章を付けることを求めた」という記事に対し、「党の制服、党の帽子、党のネクタイ、党のスカーフ、党の靴、党の靴下があればなお良いだろう。共産党もこれで前途有望だ」と、中国共産党をこきおろす投稿をしていた。
一方、慕毅飛氏を知る一部の人たちは彼を擁護する立場を崩していない。シニア論説委員の晏揚氏は「ニュースの主人公は結局のところ彼なのか?私は彼を知っており、よい人物だと思っているが、明らかな欠点がある。最大の欠点は真実を語りたがることだ。今回のことを教訓として、これからは作り話や絵空事、お決まりの話ばかりを並べ立てていくほうがいい」
また晏揚氏の意見を支持している人物は、慕氏をこのように見ている。「彼は温嶺市(浙江省台洲市の県級の市)では、事実をありのままに語ることで有名だ。他の人たちはどんどん昇進していくのに、彼は異動のたびに暇になっている。90年代初め、彼は温嶺市教委主任を務めていたが、はばかることなく真実を口にしていたため、異動を繰り返すごとに実務を行う場所を奪われていった。彼の雄弁さと理路整然としたその語り口は、温嶺市でもトップレベルだ」
さらに、事情をよく知る温嶺市の人物は同氏の経歴に関しこう語っている。「ここでは慕さんの評判は非常に高い。学識や教養もあるし、温嶺市で最も読書量の多い人ではないだろうか。蔵書は台洲市一。90年代初めには温嶺市政府部門の一員である教委主任だったが、特別な理由がないのに宣伝部へと左遷された。これは明らかに降格人事だったが、ここで慕さんは温嶺民主フォーラムを推進し、それを全国にも広めた。だが8年前に温嶺市の党校に異動させられ副校長という閑職に追いやられてしまった。真実を口にしたためにこのような結果を招いた」
河南省のある企業の副会長、魏暁軍氏も不満を表明している。「自身の言動を顧みて反省を促すため、処罰される?!貴党に対しては言う言葉が見つからない」
中国のミニブログ新浪微博のあるユーザーは、「党という鍋」を壊す時が来たと語っている。「元温嶺市教委主任、慕毅飛氏の話していることは本当だ。だからこそ党からの厳重警告処分を受けてしまった。仕事もせずに与えられた地位にただ居座り、規定通りの手当てを貰う。これが事実だ。慕毅飛氏はこの8年間(08年~16年)の「散吏」としての生活を振り返って、心の奥底に抱えていた本心を打ち明けた。その結果、党紀違反のレッテルを張られて処分された!党紀とは、党員が真実を語ることを禁止するためのものだったのか?共産党という「鍋」を壊すべき時が来た!」
(翻訳編集・桜井信一/単馨)