2016年7月、北京の天安門広場近くの地下鉄入り口で、すれ違う女性と警察官(STR/AFP/Getty Images)
ステルス税の国

税収が世界第2位の中国 課税額は収入の半分(2)

この記事は、税収は世界第2位の中国 課税額は収入の半分(1)のつづきです。


『南都週刊』が2010年に報じた記事で、中国国民は複雑な税制度のなかで、知らぬ間に収入の約半分を納税していることが暴かれた。最近、ネットにこの記事が再転載されたことで、この政府による「ステルス税(隠された税)」制度に対してネットユーザーが次々と怒りのコメントを書き込んだ。

「中国人は世界一の高額納税者にもかかわらず、世界最低水準の社会保障しか受けることができない。そして、基本的な自由や権利も与えられていない」

「つまり、われわれの収入の半分を、政府が横取りしているということだ。だが、徴集された税金がどう使われているか、我々に知るすべはない」

「人民から取り立てて、それを使う?国家機密だと?」

「国は富み、民が窮乏する根源だ!」

「中国は世界に冠たる重税国家だ。たくさんの税金が二重三重にもかけられている。これは合法的な強盗ではないのか!奪われた金は納税者の福利厚生のためには使われず、官僚の私的な飲み食いに流用され、公務員のボーナスに消えている!」

あるネットユーザーは「隠れた税収」の記事が突然削除され閲覧出来なくなったことで、強烈な怒りをあらわにした。

「今日、中国人が隠れた形で様々な税金を背負わされているという記事を閲覧した。読み終えたら転載しようと思っていたところ、すでに削除され閲覧できなくなっていた。哀れな中国人よ。巨額の税金を課せられているにもかかわらず、自分は納税者だと胸を張ることもできなければ、政府に対し正々堂々と、正当な社会保障を受ける権利を要求することもできない。自分が一体どれだけ納税しているかもあやふやで、そうした金がどこで何に使われているかも定かでない。中国人は国民ではなく、奴隷とみなされているからだ!」


 低所得者層からの税収に支えられている中国

ネット作家の金剣平氏は自身のブログで、いたるところで徴収される税金の主な納税者は貧困層であるとし、中国の税金とは「貧乏人税」に他ならないと表現している。

文中では、米国では直接税の割合が高く、個人所得税が全税収の55.1%に占められ非常に高いことが挙げられている(2011年の統計)。米国の税制度は、高額所得者により多くの税負担がかかる仕組みになっており、相続税や贈与税で課税対象となる場合もその多くが富裕層だ。米国の相続税は55%にも及び、相続する遺産が多ければ税率も高くなる。だが150万米ドル(約1億5800万円)以下の相続については非課税になるため、富裕層からはしっかりと徴収しながら、低所得層を優遇している。

また米国では、税金を納められない貧困者に対する免税措置も取られている。こうしたことから、米国の税制は富める者から徴集する「金持ち税」だと言える。

それに対して、中国では税収のほとんどが間接税でまかなわれているため、個人の所得の高さに関係なくみな一律に課税される。税率17%の増値税、3%の営業税、5%の教育付加費だけでも物品価格の25%を占めており、その他、主要な税金だけでも消費税、資源税、耕地占用税、都市土地使用税、都市不動産税、都市維持保護建設税、土地増値税、タバコ税、車輌購置税、車船税、印紙税、契約税、関税、船舶重量税など、合計19種類もの税制度が存在する。

文中では、消費が納税に直結している中国においては、中国人は出生と同時に納税者になるべくして生まれてくると自嘲気味に語られている。

「粉ミルクからおむつに至るまで課税されるため、赤ん坊も納税者だ。眠っていても納税者だ。なぜなら、高税率の基礎化粧品を顔に塗り、エアコンや暖房も使っているからだ。マンションの大家が集めた家賃で買い物すれば自動的に納税することになるし、使わずに銀行に預ければ、銀行預金税が待ち構えている」。

累進課税の個人所得税は高所得者ほど税率が高くなるため「金持ち税」と言える。だが中国の個人所得税が税収全体に占める割合は2013年に5.9%、2014年に7%と非常に低いうえ、目下中国に相続税や贈与税は存在しない。中国の税制は貧困層には非常に厳しく、富裕層を優遇するようにできている。

これが、中国の税制が「貧乏人税」と言われるゆえんとなっている。

この一文は最後にこのように締めくくられている。「政府は制限なく紙幣の増刷を行い、税金を納付していない人の懐からもお金を奪い去ってゆく。飲まず食わずでお金を一銭も使わなくても、銀行預金は自動的に目減りしてゆく。その減った額こそが、私たちの知らない間に政府がこっそり抜き取ってゆく税金だ。これを略奪と言わずして何と言うのか」。

(おわり)

(翻訳編集・桜井信一/単馨)

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