犬肉祭りを終わらせるために 3500匹を救う中国の動物愛護家
夏至の慣習として、広西チワン自治区の玉林市では、犬肉とライチを食べる「狗肉節(犬肉祭り)」が開かれる。祭りでは毎年、約1万頭の犬が殺されているという。天津の元教師は、この行事を終わらせるために20年以上、犬を保護し続けている。その数は約3500匹にもおよぶ。
犬肉祭りは、犬を食肉処理のため焼死させたり、殴り殺したりするため「残忍だ」として世界中で非難を受けていた。国際的な批判を受けて玉林市当局は2016年、「人前で犬を殺すことを禁止する」と発表した。広西の主催者は、夏至に犬肉を食べることは600年続く伝統と主張している。
動物擁護に熱心な元教師の楊暁雲(67)さんは、広西省から2400キロも離れた天津に住む。過去20年間、犬や猫の保護に時間や資金を費やしてきた。楊さんは毎年、大量の犬が屠殺される犬肉祭りを、将来的にはやめさせたいと考えている。
「犬の肉を食べるというのは地方の習慣だから、すべてを中止させたいとは思っていません」「私が行っているのは啓蒙活動で、人々の心がやがて変わるのを願っています」と英紙ミラーの取材に答えている。
仏教徒である楊さんは、犬肉祭りで犠牲になることが多い野良犬を救助し、世話をしている。現在、天津市以外の農場で犬の避難所を運営しており、約1500匹の犬と200匹の猫を保護している。
「仏教はすべての命は平等と説いています。病気などで自然に命が亡くなると、輪廻転生して次の人生を歩みます。しかし、殺されてしまったら、次に生まれ変われなくなります」と、人権民主問題を取り上げるメディア「Hand in hand with Asia」(現在閉鎖)に2015年の取材で語った。
楊さんは、夫が1995年に亡くなって以来、20年以上にわたり野良犬や捨て猫など動物たちを保護して世話してきた。喪失感に苦しみ、自殺も考えていたという。そのとき、楊さんは迷子になった猫を見つけたことで、命の意味を見出したという。以後、迷子の動物を救い続けて、これまで3500匹あまりの犬を救った。
動物保護を続けるために、楊さんは、夫の死亡後に受け取る生活手当や保険金を多く費やしてきた。
2006年には、結婚した息子へのプレゼントとして、自宅ともう一つの不動産を売却。現在は、自らの生活と動物保護施設の維持費は、寄付頼みとなっている。
ときには楊さんは借金を負わなければならなくなり、家族や友人からも嫌煙されているという。動物の群れの放つ悪臭により隣人から嫌われ、これまでに引っ越しは10回以上。このような状況下でも、楊さんはまだ動物を助けることをやめない。
そんななか、楊さんは2015年、犬肉祭が行われる広西省で動物の避難所を開設。楊さんの無私の努力には支持が集まっており、これまでに約400万人が犬肉祭りを中止させるオンライン署名にサインしている。毎年、夏至が近づくころにハッシュタグ「#StopYulin」で、動物愛護家たちが毎年、啓発を行っている。
(翻訳編集・佐渡 道世)