北京で2000年5月、ニューススタンドの前に立つ男性(STEPHEN SHAVER/AFP/Getty Images)
北京の人権弁護士・余文生氏 独占インタビュー

「中国人、目を覚まして!」金儲け主義で人のことを考えない(3)

この記事の前後は次の通り。 

「思考のマヒした中国人、目を覚まして!」北京の人権弁護士(1)

「中国人、目を覚まして!」違法ではない法輪功に違法な判決(2)

ファシスト国家でしか起きないことが起きている(4)

命なんて惜しまない(5)

記者:中国大陸にいて、日常的な情報はどこから入手していますか?テレビはご覧になりますか?

余弁護士:通常の情報はインターネットから得ています。まず国内のサイトを見てある程度の情報が得られますが、政治に関係ない話なら、そこそこの信ぴょう性は保たれています。それからネット封鎖を突破して国外メディアにアクセスします。微信やその他の外国メディアのチャットといった個人メディアを通じて、海外の状況も把握することができます。

中国のテレビは大ウソで洗脳番組

テレビはほとんど見ません。中国のテレビ番組は娯楽番組か、洗脳番組しかないと思っていますから。共産党が「偉大・光栄・正確」と賛美する番組は全部洗脳番組です。例えば抗日ドラマですが、日本軍と戦ったのは中国共産党ではなく国民党だということははっきりしているにもかかわらず、共産党は自分が「抗日の英雄」だと言い張っています。そんな番組を見ていられますか? 史実とは異なる描写もありますし、洗脳番組の多くで歴史的な事実が隠され、 大ウソが並べられています。

記者:先生が子供のころから受けてきた教育も、党メディアのプロパガンダだったと思います か?

余弁護士:はい。私たちは幼いころから多くの洗脳教育を受けており、嘘の歴史が叩き込まれています。子供のころ、自分の命を国家や党に捧げようと本気に考えていました。悪人をやっつけて台湾やアメリカを解放してあげなければ、と。アメリカ人は苦難に満ちた生活を送っていると思っていましたからね。私が受けた教育とは、こんなものだったのです。

12歳頃、騙されていることをようやく分かり始めました。私の家庭は割と裕福で、父親は政府関係の旅行社に勤めていたため、職場から香港や台湾の新聞を家に持ち帰っていました。父親が寝付いてからそっと起き上がり、外国の民主主義に触れたものです。だんだん、自分の受けている教育はおかしいのではと疑うようになりました。そんなわけで、中学高校時代はまじめに勉強しませんでしたね。学校で教わることも全部でたらめだと感じていました。

香港市内で配布される新聞「看中国」、2006年の北朝鮮の核実験危機と日中の緊張について報じる。同年撮影(LAURENT FIEVET/AFP/Getty Images)

裁判もなしにメディアを勝手に断罪、違法そのもの

 

中国当局はメディアを掌握しています。党や政府以外が新聞を刊行したり、テレビ局を興したりすることは禁じています。普通の人々が話す権利はないのです。国営メディア嘘でもなんでも言いたい放題で、信用できません。中央電視局は完全に当局の政治道具と化しています。政権にとって都合の悪い言論を発する人をテレビで「被認罪」(強制的に罪を認め)させて、メディアバッシングや世論審判をやらせる。裁判もなしメディアで勝手に断罪することは、違法その ものではありませんか。

個人メディアはまだましですが、言いたいことを好きに口にすることはやはりできません。 (不適切な)言論は削除されますから、私の文章が削除されることもしょっちゅうです。色々発言しているだけで捕まえてしまう人が結構います。憲法では言論の自由が認められています が、これも笑止千万。実際には独り言を言う自由すらありません。

記者:中国の現状がどうすれば変えられると思われますか?

余弁護士:まず、民衆が目を覚まさなければなりません。今の中国人は思考が麻痺しており、保身に走り、他人に関心がなく、自分のことしか考えていません。(冤罪で死刑になった)聶樹斌さんや賈敬龍さん、(当局に不当に拘束され、暴行を受けて亡くなった)雷洋さんたちは、私たちの身近な存在です。

今度は自分が、第二、第三の彼らのようになる日が来るかもしれない。その時に誰か助けてくれるでしょうか? 手を差し伸べてくれる人もなく、巨大な政治権力にたった一人で立ち向かうことなどできません。ですから、大衆が真に目を覚まさなければ、この社会体制を変えることはできないのです。

現時点でまだ目覚めている人はそう多くはないでしょう。私も目覚めている1人と言っていいと思いますが、私は最前線に立っていなかったのに当局に捉えられてしまいました。そのおかげで、私が成長して人権擁護者として最前線に立っています。

 海外で疎外される中国人 どうして?

政治に関心を持たねばなりません。ほとんどの中国人は政治に興味がありません。たくさんの中国人が海外で暮らしていますが、彼らは実は、疎外されています。中国人が米国社会で確固たる地位を得られないのはなぜでしょうか? 金儲けにしか興味がなく、人のことなどどうでもいいと思っているからです。

政治にも関わりませんから、当然のことながら政治的 な配慮が得られることもなく、地位が保障されることもありません。政治に関心を持ち、他人 に関心を向け、自分の権利を守るようにしなければ、社会を変え、自分の置かれている立場を 向上させることなどできません。

また、自分の思考も磨かなければ。何で自分の命を党に捧げるのですか? 何を根拠に政府を愛し、政府に感謝するというのですか? 本当は、党や政府が人民に感謝するべきでしょう。共産党が私たちを養ってくれているわけではないです。逆に、私たちが彼らを養っているのです。

私たちが種を蒔き作物を育て、さまざまなものを生産しなければ、彼らは生きていけません。しかし現状は、国民が食料を生産しても、その9割は彼らに持っていかれて、手元にはたった 1割しか残らない。それなのに党や政府は「我々が人民を養っている」などと言っています。ばかげた話です。

(つづく)ファシスト国家でしか起きないことが起きている(4)


余文生 北京在住の弁護士。

共産党独裁体制の中国で、命の危険をかえりみず弱者の弁護に取り組む人権派弁護士。拘束や拷問の経験もある。最近、大紀元のインタビューに答え、自由のない社会に生きているため「思考がマヒしてしまった」という中国人に対して「目を覚ませ」と呼びかける。

余氏は、2014年に香港で起きた民主化運動「雨傘運動」を支持した中国国内の人権活動家の弁護を引き受けたことで、 同年10月に、中国当局により拘束された。2016年からは、中国の人権弱者や法輪功の裁判を担当している。

(翻訳編集・島津彰浩)

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