習近平国家主席 (Photo by Lintao Zhang/Getty Images)

19大までの5年間 覆された江沢民の数々の政策

中国共産党第18回全国代表大会(18大)以来、習近平氏は軍事、政治、教育、経済など各分野で江沢民政策を覆してきた。そのため、江派の利益集団からの反発も空前絶後のものとされる。19大まで過去5年間も繰り広げられた習、江両陣営の熾烈な戦いは、江派勢力の敗退で決着がついたとも読み取れる。

教育改革の始動 江政権の2プロジェクトに終止符

習近平当局は9月21日、「一流の大学と一流の学科の建設」(通称「双一流プログラム」)を打ち出した。同プログラムの始動は江沢民政権が推進した「211」「985」プロジェクトに終止符を打った。

「211プログラム」は、教育部が1995年に定めたもので、21世紀に向けて中国の100の大学に重点的に投資していくとしたもの。これら大学は「211工程重点大学」あるいは「211重点大学」と呼ばれ、それまでの「国家重点大学」という言葉に取って替わった。

「985プログラム」は1998年5月に定められたもので、中国の大学での研究活動の質を国際レベルに挙げるために、211工程の中で限られた重点大学に重点的に投資していくプログラムである。

しかし、この二つのプログラムは教育資源の不均衡をもたらし、社会問題となっている「入試のための教育」に拍車を掛けると批判された。

2016年7月22日、人民日報は「211」「985」は裸の王様だと批判し、人を育てるという教育本来の目的が置き去りにされ、有名大学への進学率を追求する道具と成り下がったと糾弾した。

2015年以来、王岐山氏は教育部でも反腐敗の嵐を起こし、指導側の幹部を次々と調査、免職させた。2016年6月30日、教育部部長の袁貴仁氏が職を解かれた。袁貴仁の解任には「211」「985」の廃除と関連するとの分析が出ている。

政経癒着にメス

9月25日に公表された「政商関係29条」では、習近平氏は民間企業との付き合い方について「親」「清」の二文字を提唱した。親とは民間企業の相談に親身になって乗ってあげること、清とはクリーンであること。さらに、「勤勉、節約」「享楽主義を慎み、贅沢風潮を警戒し、健康な生活情趣を保つ」となどの文言があり、目下のところ中国大陸の企業家及びその家族の奢侈(しゃし)な生活について否定的な態度を示している。

江沢民は在任中、腐敗を放任することよって、自身への向心力を図った。習近平氏の反腐敗運動が始まるまで、基本的に「富豪は権力者に依存、権力者は富豪を利用する」という構図だった。18大後に失脚した幹部たちの背後には、いずれも巨大な利益集団と深い繋がりを持っている。

昨年末から、習近平氏、王岐山氏は金融界で腐敗取り締まりをより一層強化し、大富豪が相次ぎ摘発された。中には、曾慶紅と関わる肖建華氏、太子党と江派とも関わる安邦董事長吳小暉氏、そして賈慶林家族と親しい黃如論氏などが調査を受けている。

同時期に、反腐敗核心人物の王岐山氏に関するスキャンダルは海外で出回り、習、江両陣営の激戦ぶりを物語っている。

一部のメディアは、7月26日~27日に開かれた「メモをしてはいけない」京西会議で、習氏が「代価を惜しまない」という指示を出したと伝えた。1.世論の批判の的となった上層部幹部を代価惜しまず守ってあげる。2.党内の異議者を代価惜しまず排除する。3.内部と外部の圧力に代価惜しまず対応する。4.19代前の全ての不安定要素を代価惜しまず鎮圧するとの内容とされる。

習近平氏は、これら4項目に異議を唱える者は、職務、政績、功績問わず「反革命罪」として懲罰すると強調し、その場の上層部幹部たちを凍り付かせたという。

「三つの代表」理論は実質終結

 

著名な経済学者の何清漣氏は記事で、習近平氏のペースで進めば、江沢民政権が確立した「中国式の発展モデル」は収束を迎えると述べた。

何清漣氏はこの「中国式発展モデル」を「共産党資本主義」と呼んでいる。『共産党宣言』では共産主義と資本主義が相反するものとしているが、中国の共産党政権だけは両者をうまく融合させたと同氏は指摘する。共産党政権が自ら資本主義と連携することによって短期間でアメリカをも超える億万長者集団を生み出した一方、80%の中国国民を社会の低層に陥らせたと何氏は批判した。

江沢民が「三つの代表」の理論を打ち出してから、企業家の共産党加入を奨励してきた。多くの富豪は人民代表大会や政治協商会議のメンバーとなり、全人代は富豪クラブと化した。各地で幹部と企業家の癒着が横行し、国有資産を餌食にしてきた。19大を目前に、習当局は政経癒着にメスを入れ、中国政権と資本家の連携関係の黄金時代に終焉を告げた。

江沢民勢力の衰退

中国共産党建軍90周年大会で、習氏は毛沢東と鄧小平の言論を一部引用するも、江沢民の名前を口にすることはなかったことから、江の「軍事思想」破棄の徹底ぶりが見られた。

今年8月に開催された北戴河会議に江沢民氏は、三年連続で欠席したと報じられた。

共産党の上層部人事について話し合う非公式会議・北戴河会議直前の7月24日、中国共産党の江派権力後継者、政治局委員、重慶市委書記孫政才氏が突如調査された。孫氏は賈慶林、劉淇、曾慶紅及江沢民が推した「次期後継者」とされていた。同氏の失脚で江沢民一派の存続の道は絶たれた。

中国共産党がバックにある海外の中国語メディアは昨年の記事で、江沢民の「長老の政治介入」を手厳しく批判した。江氏は政局が安定しているにも関わらずに権力に執着し、最高指導部の人事采配に干渉し、当時の胡錦濤国家主席の実権を奪ったと指摘し、習近平指導層は現在、「長老政治」の束縛から解放されたとアピールした。

8月14日から、同中国語メディアは立て続けに江沢民を批判する記事3本を掲載した。江沢民を名指しして、長老による政治介入を批判した。当局がコントロールする海外メディアによる江沢民への初批判は、江派の時代の収束を示唆している。

時事評論家の李林一氏は、中国大陸で益々民心を失う中国共産党は、近い将来に崩壊することを確実視し、「江沢民の逮捕、共産党の解散」は時代の流れであり、中国に残った唯一の希望との見解を述べた。

                         (大紀元ウェブ編集部)

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