中国当局、北京の高級幼稚園虐待は「ねつ造」富裕層でも子供を守れない社会
中国北京市朝陽区警察当局は28日、同区にある富裕層向け幼稚園「紅黄藍幼稚園」での園児虐待と集団性的暴行の疑いについて捜査したところ「虐待の事実はない」とし、通報した保護者らが「事件をねつ造した」と発表した。当局発表の信憑性を疑う中国国民から非難が殺到している。この騒動で、共産党専制体制下では、たとえ富裕層であっても、当局の意のままに翻弄され、子供を守ることができないとの冷酷な現実が浮き彫りとなった。
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「防犯カメラは壊れた」警察当局の発表
朝陽区警察当局は公表では、「園児らが性的暴行を受けた形跡はない」としている。また、当局はインターネット上で幼稚園での集団性的暴行についての投稿は「うわさ話」と主張し、デマを流布したとして2人のネットユーザーを逮捕、「教育している」と発表した。
当局の発表では、子供が性的暴行を受けたと訴える一人の保護者について、「ねつ造した」「本人は社会に対して、事実を明らかにして、公に謝罪するつもりだ」と強弁した。
また、園児に対するわいせつ行為について、「関連紅黄藍幼稚園の教職員78人は、勤務中に単独で園児との接触はなかった」と当局が見解を示した。
さらに、保護者らが園内の監視カメラを公表するようにとの呼びかけに対して、当局は「虐待などの疑いがあったクラスの監視カメラは、数回の強制的な電源切断により保存ハードディスクが壊れている」「現在約113時間分の画像を修復した。園児らへのわいせつ行為を加えている場面はまだみられない」とした。
同時に不審の薬について、「保護者は子供が薬を飲まされていないと認めた」と主張。
当局が唯一認定したのは「園児らは針で刺された」ことだ。同園の劉教諭(22)が「(昼寝の時間に)園児が寝てくれないため、『しつけ』として針を刺した」という。当局はすでに劉氏を身柄拘束したと発表。
当局は保護者を脅迫か
問題の封殺と鎮静化を図る当局の「アメとムチ」工作が、大紀元の取材で明らかになった。騒動の事情をよく知る匿名希望の市民は大紀元に対して、「保護者の何人かは当局に脅迫されて、声を上げなくなった。当局に対抗姿勢を続けた一人の保護者は拘束された。さらに、当局から『口止め料』として保護者らにそれぞれマンションの部屋を与えられている」と話した。
中国版ツイッター「微博」のユーザー「不枉余生」によると24日、当局が一部の保護者と面談した。当局は保護者に子供の退学を要求し、退学後にもメディアへの取材を受けないよう求めた。
28日、同幼稚園の被害者園児の保護者らに電話取材を試みたが、電話はつながらなかった。
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当局の発表に世論非難が殺到 情報統制で削除
朝陽区警察当局が28日夜、同微博公式アカウント「平安朝陽」で、調査結果を発表した。この直後に、同投稿のコメント欄に「発表に納得できない」とネットユーザーから非難のコメントが数千にも上った。
「おかしくてたまらない。本年度コメディー部門の最優秀賞を受賞」「目を疑った」「多くの保護者は成分不明の薬を飲んだ。そして、娘らの潔白を犠牲にしてまで幼稚園を陥れた、ということなのか」「このくだらない結果をみると、『やっぱりあった』と確信した」「皆さん、監視カメラのハードディスクを修理してあげましょう」などなど。
多くのユーザーは「保護者が暇つぶしで、子供が虐待と性的暴行を受けたとねつ造した、とでも言うのか?」「この広い幼稚園には、監視カメラが何十カ所もあるはずだ」、と当局の発表を信じていない様子だ。
なかには、中国当局が最初から軍や指導部高官が絡んでいる今回の事件の真相を明かさないつもりだったと指摘するユーザーもいる。
いっぽう、ネット情報を統制する当局はユーザーらの非難コメントをすべて削除した。微博「平安朝陽」のコメント欄も一時閉鎖した。現在、表示されているコメントは当局への支持を示す投稿のみだ。
あるユーザーは「削除されたのは国民の信頼だ」と吐き捨てた。
富裕層も共産党体制の犠牲者に
虐待と性的暴行を訴えた保護者の子供は同園の国際コースの3歳児クラスだ。中国メディアの報道によると、英語教育を行う国際コースは月5000元(約8万5000円)だ。他の諸費用を合わせると、月の学費は日本円で換算すると10万円以上かかる。
中国国家統計局が発表した2015年都市部労働者の平均賃金統計によると、1位の北京市は1カ月当たり9282元(約15万7794円)。同幼稚園の学費基準をみると、富裕層向け幼稚園であることは明らかだ。
米国滞在中の中国人大富豪・郭文貴氏は自身の子供3人もこの幼稚園出身だと25日、自身のインスタグラムで明かした。
今回の事件は富裕層であっても、当局の意のままに翻弄される現実を浮き彫りにした。しかも、お金があっても、わが子を守ることができないという現実を突きつけられた。
「お金の価値がなくなった一日」とある市民はインタネットでつぶやいた。
(記者・陳漢/周慧心、翻訳編集・張哲)