盗まれる西側の軍事技術 中国の手口の数々(上)
西側の軍事技術を虎視眈々と狙う中国共産党。近年、軍事情報の窃盗は軍を成長させる国家戦略となっており、ますます憂慮すべき問題となっている。
1月、中国国営の江西洪都航空工業グループが発表した「L15ジェット練習機」のプロモーションビデオで、L15ジェット機の翼下に「TL-20/CK-G」と書かれた爆弾が設置されている。海外の専門家は、TL-20と米国空軍の最新の第2世代小型直径爆弾であるGBU-53/Bの類似点を直ちに指摘した。
2017年3月、人民解放軍の殲-20戦闘機が正式に就航した。数年前、中国と米国は、殲-20が米国のF35の模倣品かどうかについて、口撃合戦をしていた。2つのモデルに多くの類似点が見られるためである。2014年、米当局はF35やその他の戦闘機の設計情報や製造技術を盗んだとして、2人の中国人を逮捕した。
長年にわたって、機密技術を盗んでいる中国に対して、西側諸国は警戒を強めている。
技術強化を計画
人工知能(AI)などハイテク産業は、軍事開発において重要な役割を果たしている。諜報データ自動選別ソフト、小型無人航空機(UAV)や無人自動運転車などの設備と技術は、軍の戦闘能力を大幅に高めることができる。長年にわたり、中国当局はこうした技術を手に入れるために注力してきた。
昨年7月、中国国務院が発表した「新世代人工知能の開発計画」では、「AIが国際競争の新たな焦点になっている」と明確に示されている。AI開発を「国家戦略のレベル」で扱い、計画的に取り組むべきだとした。
同計画はまた、基礎理論、主要機器、ハイエンド・チップ、ソフトウェアなどの分野で、「独自の成果」に欠けていると述べ、先進国より遅れていることを認めた。また、計画的な発展戦略が確立されておらず、一流のAI技術の人材不足も深刻だと言及した。
同計画は、この現状を考慮して、「新世代人工知能の開発計画」で西側諸国と技術を「統合させる」ために四つの戦略を立てたと自ら言及した。1)国内のAI企業が海外へ進出し、外国企業を買収し、外国株式やベンチャーキャピタルに投資し、海外で研究開発センターを設立する」ことを奨励する。2) 外国のAI企業や科学研究機関を誘致し、中国で研究開発センターを設置する。3) 海外で一流の外国人研究者や中国人専門家の募集に力を入れる。「千人計画」などの制度を利用してAIの人材確保に努める。4) 中国のAI企業が、優れたAI技術をもつ外国の一流大学、科学研究機関、研究所と提携関係を結ぶよう支援する。
西欧諸国は、これら4つの戦略が中国に技術を盗む機会を提供したと分析する。この記事及び次回の記事は、各戦略についてより詳細に記述していく。
戦略1:中国政府は、大規模な外資系ハイテク企業を買収する国内企業を支援
中国企業は2008年に英国のハイテク企業を買収してから、味をしめた。この企業から取得した技術で、空母の建造を大きく前進させたからだ。
米国と中国は10年以上にわたり、リニアモーターを使って艦載機を空母から高速発進させる次世代技術・電磁式カタパルト(EMALS)の開発競争を続けてきた。米国は初めて開発に成功し、昨年7月に就役した米海軍の最新鋭空母であるジェラルド・R・フォード級航空母艦に採用した。
しかし、昨年10月に中国軍紙が次世代技術・電磁式カタパルト(EMALS)実験に「成功した」と報じた。
高い技術を要するカタパルトの完成には、「絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)」と呼ばれる半導体素子が不可欠とされる。この半導体素子により、電流をミリ秒(1000分の1秒)単位に変換してモーターに送り、空母のデッキから軍機を高速発進できる。
サウスチャイナ・モーニングポスト11月18日付によると、中国が所有するIGBTは、国有企業・株洲南車時代電気が、傘下である英国の半導体企業ダイネックス・セミコンダクターと共同開発したものだという。
2008年のリーマンショック(世界的金融危機)時に、株洲電気はダイネックスの株を75%取得し、子会社化した。
当時のゴードン・ブラウン英首相が、この買収計画を国家安全保障に対する脅威と見ていなかったため、阻止しなかったと述べた。
翌年、英政府の戦略輸出管理リストにIGBT社がリストアップされた。
中国メディアの複数の消息筋によると、中国当局はすでに湖南省株州市で大規模なIGBT製造施設を建設しているという。
2018年1月9日、米議会で開かれた外国投資委員会の公聴会で、独立機関である米国知的財産権窃盗委員会のデニス・ブレア代表は、中国の現在の軍事技術脅威について語った。
中国政府はいままで二次技術をターゲットにしていたが、現在は最先端技術に注目している。米国の軍事技術を盗むための主要な手段は、米国や米国の同盟国で行われた投資だと指摘した。
2017年8月15日、ロス米商務省長官はフィナンシャルタイムズ(FT)紙で寄稿した記事で、「中国は入手したい技術を開発した米国企業を探している。彼らは専門知識を得るために、これらの企業をターゲットに定めている」と述べた。同氏はまた、優れた技術を有するスタートアップ企業を発見したら、市場より好条件を提示して投資を行う。そのとき最も配慮しているのは「収益率」ではなく、「いかに先端技術を入手するか」だと指摘した。
ドイツのシンクタンクであるメルカトル中国研究所が2016年12月に発表した報告書によると、米国のほぼすべての大規模半導体企業が、中国企業からの投資オファーを受けたことがあるという。
中国の国有企業が目的をもって外国企業を買収した例はほかにも多く存在する。例えば:
殲-20を設計し製造した成都航空機産業グループの親会社である中国航空産業グループ(アビック)はこの6年間、航空機とその部品を製造する米国企業を多く買収した。アビックは2011年、傘下の子会社を通じて、米国の製造メーカーであるCirrus Aircraftを買収した。この買収を通じて、米国エネルギー省が運営するオークリッジ国立研究所で研究開発を行うことが可能となった。
カリフォルニア州にあるキャニオン・ブリッジ・キャピタル・パートナーズ社は2016年11月初旬、米国の半導体会社Lattice Semiconductor Corpを13億ドルで買収すると発表した。しかし、キャニオンブリッジの唯一の投資側は中国政府とつながりのあるベンチャーキャピタル(VC)ファンド(China Venture Capital Fund Corporation)である。ドナルド・トランプ大統領は2017年9月、この買収が国家安全保障上の脅威となる可能性があるとして、買収計画を中止させた。
この買収が失敗した直後、キャニオン・ブリッジは、チップ設計専門のイギリスのテクノロジー企業Imagination Technologiesを買収すると発表した。この契約は、11月に英国裁判所によって承認された。
戦略2:ハイテク企業を中国に投資する
ロス米商務省長官はFT紙の文章で、中国は公正公平の原則で経済活動を展開しているのではなく、技術を狙っているとは思いもよらなかったと述べた。中国当局は中国に進出した米国企業に対して、中国市場へのアクセスと引き換えに独自の技術を譲渡するよう圧力をかけた。米国企業は中国で事業を展開したければ、中国企業と合弁会社を設立するしかない。所有権も50%以下に限られている。「製品販売契約の一環として、技術を移転する必要がある」とロス氏は記している。
これらの企業の多くはハイテク関連である。2017年2月、世界2位の米半導体メーカーGlobalFountriesは四川省成都に工場を建設するプロジェクトに100億ドルを投資すると発表した。
同紙によると、中国政府は、GlobalFountriesの中国工場に約1000億ドルを支出する計画を発表したという。
2016年、米大手プロセッサメーカーのクアルコム(Qualcomm)が中国の貴州省政府とともに、サーバー用プロセッサの開発・販売を行う合弁会社を設立すると発表した。新たに設立される貴州華芯通半導体技術(Guizhou Huaxintong Semi-Conductor Technology)に対して、クアルコムと貴州省政府は合わせて2億800万ドル(18億5000万元)の初期投資を予定。新会社への出資比率はクアルコムが45%に対して貴州省政府が55%。
ニューヨークタイムズ紙2017年8月の調査報道によると、中国に進出するため、米企業は技術の譲渡、合弁企業の設立、商品の値下げ、中国国内企業への援助など中国側の条件を受け入れた。これらの手段を通じて、中国当局はAIと半導体などの分野で大躍進することを可能にした。
独自技術の譲渡によって、米企業は競争の優位を失い、軍事に適用できる重要な技術を中国に手渡してしまう危険性がある。
中国による知的財産の窃盗は、米国経済にとって大きな財政赤字をもたらした。2017年2月27日、米国知的財産権窃盗に関する委員会が提出したレポートによると、企業秘密の盗難による損失額は年間1800億ドルから5400億ドルに達すると推定されているという。
(翻訳編集・李沐恩)