IMF専務、中国の一帯一路「債務が多すぎ」と指摘
国際通貨基金(IMF)のクリスティーヌ・ラガルド専務理事は4月12日、中国の野心的な世界規模インフラ構想「一帯一路」について、計画に関わる国に「負債が多すぎる」と警告した。
アジア、アフリカ、ヨーロッパなど世界数10カ国にまたがる習近平政権の肝いり政策「一帯一路」は、道路、港湾、鉄道を含む大規模な中国主軸の現地インフラ開発計画だ。現代版シルクロードとも呼ばれ、中国共産党政府は各地域的な影響力を拡大させている。その経済規模は100兆円とされる。
しかし、「一帯一路」計画は、中国からの融資と中国国有企業が請け負う計画がほとんどで、インフラ整備される国は、中国政府に数10億ドルもの借金を背負うことになる。
「計画は債務超過の問題を引き起こす。(中国側に対する)返済額の増加により、現地政府の他の支出を制限させることになる」と北京で開かれた一帯一路フォーラムに出席したラガルド氏は壇上で語った。「公的債務がすでに高い国では、資金調達の条件を慎重に審査することが重要だ」と付け加えた。
たとえば、スリランカでは既に債務は深刻化しており、ローン返済のために重要な資産を中国に明け渡した。スリランカ政府は2016年、海洋戦略的に重要な立地にあるハンバントタ港99年間の運営権を中国企業に与えた。
2018年3月に発表された、米ワシントンのシンクタンク「グローバル開発センター」の調査によると、パキスタン、モンゴル、ジブチ、モルディブ、ラオス、モンテネグロ、タジキスタン、キルギスタンの8カ国が、一帯一路に係るインフラ整備計画で、債務超過のリスクにさらされる恐れがあると指摘した。
警戒感を示す国は、融資の受け取りを拒否している。パキスタンやネパールは2017年末までに、中国企業との間で結ばれた総額200億ドル(約2兆2500億円)以上の大型水力発電プロジェクトを取り消した。
パキスタンは2017年11月、インダス川上流ディアマーバシャ(Diamer-Bhasha)での水力発電ダム建設に、中国からの140億ドル(約1兆5750億円)の資金援助を「国益を損なう」として辞退した。同国水利電力省によると、中国側から既存のダムを担保に入れ、ダム所有権や運営、維持管理などは中国側に属するといった融資条件だったという。
ネパールでも同月、「財務規則違反」や「入札数や競合社の不足」を理由に、中国企業と合意した25億ドル(約2813億円)規模の水力発電所建設計画を中止した。
ラガルド理事はこのたびの演説で、中国政府に対して、一帯一路に関わる大型計画の資金の流れを開示できる機関の創設を提言した。関係国の債務超過、公的機関による腐敗を防ぐために、会計の透明性を高める措置を取るよう求めた。
(編集・佐渡道世)